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つかのまの
意識がはっきりとしない。
目が開かない。体が重くて思うように動かない。
あれからどうなったんだっけ…悪魔が来て…ユリエルが…
そうだ…ユリエル…
「――が変わるなんて――せん。――してみないと――」
「そちらに――したら――んじゃない。――で――――ます」
「そんな――。――機関も――――るんですよ、――――できない」
誰かが喋っている声がする。父様の声がする。
父様…
かろうじて指がぴくっと動いた。でもちゃんと父様は気づいてくれた。
「ウィル!聞こえてるかい?ウィル?」
父様の声で段々意識のもやが晴れて行く。必死にまぶたに力を入れて、少しずつ持ち上げる。
「と…う…さま……」
ほとんど声は出ていなかった。それでも強く手を握って父様は俺に応えてくれた。
「ウィル…ウィル…よかった。二日も眠ったままだったんだよ…」
父様の声は震えていた。俺は父様の手を握り返した。
「…ゆ…りえる…は…?」
「無事だよ。お前のおかげだ。マリウスも無事だし、ルーも元気だ」
「よか…った…」
ホッとしたのもつかの間、また俺の意識は遠のいた。