side:ユリエル
当たる。そう思ってとっさに腕を前に組んだ。目をつぶって衝撃に備えたが、その衝撃がこない。目を開けると悪魔に抱えられたウィルが光っていた。
「うぐあああああ!なぜだ!俺の術は効いていたはずなのに!」
悪魔は耐えきれないというようにウィルから手を離した。しかしウィルが地面に落ちることはなく、そのまま宙に浮いている。ウィルがそのまま悪魔に手をかざすと、さらに苦しみだす。
「あああああ!鍵にこんな力があるなんて!聞いてない!聞いてない!」
悪魔はそのまま光から逃げるように天高く飛び上がると、森の方へ飛んでいってしまった。
するとウィルの体は発光を徐々に弱め、ゆっくりと地面におりてきた。完全に地面に降りて、体を横たえると発光は完全になくなった。
俺は急いでウィルに近づくと声をかけた。
「ウィル!ウィル!しっかりしろ!ウィル!」
体を揺すって声をかけるが反応がない。パニックになっていると、横でうめき声が聞こえた。
「うっ…」
「っ?」
マリウスが倒れている。こいつも無事だったか。ホッとしたのもつかの間、俺はマリウスに声をかける。
「マリウス!起きろ!ウィルが大変なんだ!」
「ユリエル様…っウィリアム様!」
マリウスはふらつきながらもこちらに近づいてきた。
「お前は簡単な医療魔法も練習していると言っていたな、なんとかならないか」
「本格的なものではないので応急処置にしかなりませんが、やってみます」
マリウスはつらそうだがウィルの体に手をかざし、医療魔法を展開する。
頼む、頼む、ウィル、目を開けてくれ…!
「おかしい…」
「どうした?」
「ウィリアム様の体に異常なところは何もない。むしろ魔力があふれていて通常よりも状態がいいんだ」
「悪魔に攻撃されなかったんだろう」
「いや、それはいいんだ…でも、あふれている魔力が…光の因子だけなんだ…ウィリアム様は光の因子を持っていないはず…どうして…それに、大地の因子が全く感じられない…」
どういうことだ…光の因子もだが、大地の因子が感じられないなんてあり得ない。
今までウィルは大地の魔法を使っていたし、それに、魔力特性は死ぬまで変わらないはず。
いっぺんに多くのことが起きすぎて処理しきれず、途方に暮れていた。
「ユリエル!マリウス!」
走ってくる父とエインズワース公爵を確認したあと、俺は気を失った。