幸せの時間
マリウスが俺に使えるようになってから初めての魔法訓練だ。今日からマリウスも参加するらしく、ローランドに挨拶した。
しばらくするとユリエルが到着した。ユリエルは既に練習着に着替えていて、準備万端だ。
「ウィル、おはよう。……そっちは誰だ?」
「俺の世話係になったマリウスです。これからは三人で訓練をするからそのつもりでお願いします」
「ユリエル様これからよろしくお願いします」
「…ああ、よろしくマリウス。あと、訓練中は使用人としてではなく、訓練仲間として接してくれ。呼び方もユーリでかまわない。その方が訓練に集中できる」
「分かりました。訓練中は使用人ということは忘れます」
「たのむ」
いい感じに二人が打ち解けてくれたようで安心した。
マリウスは水と風の二つの因子をもっていた。それを利用して氷の魔法も練習中のようだ。
火と大地と闇を持っているユリエルは火と大地の因子を掛け合わせた溶岩系の魔法を練習中だ。
俺はというと、植物系の魔法はなんとかコントロールできるようになったのだが、最近始めた地震系の魔法は加減が分からず練習用のフィールドをまっぷたつにしてしまった。ちょっと揺らそうとしただけなのに…。
ほかの二人は順調に練習の成果が出ているらしく、ローランドに厳しく指導されながらもほめられていた。
それに対して俺は…
「う~ん…魔力量はこの三人の中でも一番だし、センスはいいんだけどなあ…どうしたもんか…」
「すいません…」
うう、やっぱ魔法の才能無いんだな…俺…。
この日もあまり魔法訓練は進まず、午後の体術訓練が終わるとみんなシャワーに向かった。
シャワーから出ると、ランスロットがタオルを広げてくれた。
「ウィリアム様、お茶になさいますか?」
「…うん、ルーも呼んで庭でお茶にしようか」
「かしこまりました」
みんなでお茶をする時間がすごく好きだ。
中庭にある白いテーブルにアフタヌーンティーセットを広げ、囲む。
ルーが嬉しそうにお菓子を食べ、今日あったことを話してくれる。それをうんうんと聞きながら口を拭いてやるとはにかみながら「ありがとうおにいさま」と笑ってくれる。鼻血が出そうだ。
俺の反対側にはユリエルが優雅にお茶を飲んでいる。すごい絵になってる。さすが貴族。俺も貴族だけど。
後ろではマリウスとランスロットが控えており、見守っていてくれる。
「今日は天気がよくてよかった。そろそろ肌寒くなってきたし、中庭でのお茶は今日で終わりかな…」
「そうですね、これからしばらくは中に入ってお茶にしましょうか。体が冷えたら大変ですし」
「おにわでおちゃするのもうできないの?」
「体が冷えて風邪をひいたら大変だからね。お花が咲く頃にはまた外でお茶会をしようね」
「うん!」
こんな日が続くといいな、そう思えた。