side:マリウス
本当ならばウィリアム様が魔法学院に入学するのに会わせて、十二歳になったときに対面する予定だったのだが、予定よりも大幅にウィリアム様が成長しており、今から世話係として側にいて一緒に成長した方がいいという父の判断により、今日からお世話させてもらうことになった。
「ウィリアム様は大変優秀な方だ。もう魔法学院レベルの座学の知識は習得済みで、家庭教師をつける暇もなかった。だが魔法訓練が少し苦手でな。苦手と言ってもブラウニング家の嫡男と一緒に訓練できるレベルであるし八歳という年齢を考えれば天才と言ってもいい。
しかし、大地の因子しか持っていないから、敵から身を守ったり自衛したりする面が不安でな…夜会に出てからよからぬことを考えている奴らも出てきているし。そこでお前は世話係兼護衛係というわけだ。しっかり頼むぞ」
「わかってる」
アーサー様があまり表に出さないせいで、ウィリアム様が天才だと言うことはあまり知られていない。それよりも美しいという噂の方が一人歩きしており、そっちの方が問題だった。
美少年好きの腐れ貴族には噂が出回っており、エインズワース家に手を出すわけにはいかないが一目見たいというよこしまな奴らが増えている。頭のおかしなやついないとも限らないので、警戒は続けているが。
「そうそう、お前もウィリアム様と一緒に魔法訓練を受けてもらうぞ。ユリエル様とも顔を合わせておいた方がいい。ウィリアム様の数少ない友達だし、ブラウニング家とは家族ぐるみでつきあっているから、これからのことを考えるとな」
「ブランデル中将の訓練が受けられるのはとても光栄だな…ユリエル様ともうまくやってみせるよ」
「頼んだぞ」
少し緊張する。いろんな訓練を受けてきたけど、表情に出さずいつも冷静でいるってのは案外難しい。
今まで話だけでしかウィリアム様を知ることができなかったlけど、今日は実際に会えるのだ。
「ウィリアム様がいらっしゃる。背筋を伸ばせ」
緊張から少し前屈みになっていたようだ。姿勢を正すと、扉が開いてウィリアム様が入ってきた。
結論から言うと、ウィリアム様は想像を超えた美しさだった。
天使だと言われる理由も分かる。本当に天使のような姿だった。
白い肌も、大きなアイスブルーの瞳も、輝く銀色の髪も、華奢な体もすべてが芸術品のように整っており、欠点を見つける方が難しかった。
隣に立っている父に背中をつつかれはっとして自己紹介をした。
これから自分が使える主は天才で天使。
なぜか守らなければならないという使命感が、小さく芽生えた。