お世話係の少年
バラの季節が終わりを迎える頃、エインズワース家にある男の子が加わった。
「マリウス・ビーンです。これからウィリアム様のお世話係をつとめさせていただきます」
「よろしく、マリウス」
俺がユリエルたちと交流を持つようになってから行動範囲が広がり、ランスロットだけでは俺とルーの世話をみきれなくなって来たということで、俺専属の世話係が付くことになった。
アルバートの息子のマリウスだ。元々マリウスは俺の専属の秘書になる予定だったらしく、本当だったら学院の入学に会わせて俺と対面する予定だったのらしいが、魔法訓練のレベルが思ったよりもあがっていること、何より、俺に近寄ろうとしている大人が多くなってきていることを重く見て、早い段階で俺に会わせたらしい。
「ウィリアム様、こちらは私の息子のマリウスです。幼い頃から使用人としての心構えは叩き込んでありますし、マナーなども心配ないよう身につけさせています。ですがもし、至らない点がありましたら遠慮なく仰ってください。甘やかすことはマリウスのためになりませんから」
「わかった」
そう紹介されてマリウスを見ると、にこりと笑みを返された。
俺より一つ上でユリエルと同い年だ。背はこの年頃であれば平均的な方だろう。
髪はアルバートほどではないが、光に当たると少し赤くなってきれいだ。ウルフカットのような髪型で襟足が少し長い。左目の下にほくろがあって、こう、まだ九歳だというのに妙に色っぽい。
というか、チャラそう。でもきちんと制服を着ているし、だらしない感じはみじんも無い。
イケメンの特権だな。アルバートの息子ということは、将来大きくなるんだろうなあ…。