夜会から変わったこと
初めて夜会に参加してからというもの、パーティーのお誘いがいっきに増えた
「夜会の誘いがいっきに増えたなあ…すべて断るわけにはいかねえし…」
と秘書のアルバートがこぼしている。
アルバート・ビーンは元軍人で、今はエインズワース家に使えている。元々エインズワースに代々使える家系なのだが、父様と一緒に魔法学院で学ぶうちにめきめき実力を表し、統括機関により軍に配属されてしまったらしい。
しかし、その統括機関を押さえて軍に従事してからたった四年で退役し、本来の職務である父様の秘書に強引に戻ったすごい人である。
アルバートは優秀で、父の右腕として今は活躍している。父と同い年で、百八十センチは超えている身長。
元軍人なのでがっしりとしていて、赤毛を立たせていてワイルドな男前である。日に焼けて健康的な肌が色白な父と対照的で、二人並ぶと太陽と月のようである。
「マクレーン伯爵からも招待状が来ていますね…このかたはあまりいい噂を聞きませんし、お断りの手紙を出しおきましょう。シルヴェストル侯爵のは―――」
アルバートの隣で一緒に相談しているのはエインズワース家の執事であるランスロット・コーウェル。
屋敷での使用人を取り仕切る立場にある。アルバートがカバーできないプライベートな部分を世話するが、母が亡くなってからは俺とルーを中心に世話をしてくれている。
百七十と少しの身長にフレームの無い眼鏡をかけている理知的な美形である。涼しげな紺碧の髪をしており、さらさらの髪をなびかせて歩く姿は使用人たちのあこがれの的である。
「まったく、ウチの主にも困ったもんだぜ。美しすぎるのも考えもんだな」
「特に、先日の夜会で現れた天使に会いたいと思う者が続出していて、あまりよくない貴族の方からもパーティーのお誘いが絶えません。公爵家の子供に手を出そうとするような馬鹿はいないは思いますが、ここまでくるとさらわれないかと心配になりますね…屋敷の警備を厳重にしましょう」
なんだか大変なことになっているらしい。俺に気づかず招待状の分別をしている二人をドア越しに見ながら思った。
エインズワース家の使用人ともあろう二人が俺の気配に気づかないのは問題だと思うが、それは俺が故意に気配を消しているからであるので、あの二人は攻められないだろう。
そしてもう一つ、夜会からかわったことがある。ユリエルとの交流が増えたことである。
あの夜ルーと仲良くなってから、後日昼間にお邪魔してバラを見せてもらった。ユリエルの言っていた通り、ゴールドローズは太陽の光を浴びて金色にキラキラ光っていてとてもきれいだった。
ルーを一人では行かせられないので、俺はランスロットをつれて三人でブラウニング家を訪れたのだが、かなり手厚く歓迎された。
特にユリエルには、庭を隅々まで案内してもらった。
ルーのことを案内するのだと思っていたが、ユリエルの弟のエディソンがルーと意気投合してしまって二人で庭を駆け回ってしまっているので仕方ないと言えば仕方が無い。