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気づいたでごわんす

 和也や桐花が血眼になって桃菜を捜してる間、学校ではもう一つの事件が発覚していた。


「だ、誰のだ? この制服と……下着」

「さ、さあ……」


 桃菜たちのクラスの男子生徒二人が、トイレに行った帰り際に見つけてしまったのだ。

 桃菜が猫化した際脱げた、桃菜の制服と、パンツと、ブラジャーを。


「おお……何か知んねえけど……ラッキーだな俺たち。女子高生の生パンツ……」

「お、おい。お前変なこと言うなよ。……どうするこれ」


 男子生徒は顔を赤らめつつ、取り敢えず担任に言うことにした。


「あ、あのせんせぇー。ってあれ、いねえ」


 男子生徒達は、騒動の際にトイレに行っていたので騒動を知らない。


「先生なら緊急会議中よ。知らないの? 桃菜が行方不明なのよ。ヘラヘラしないで。気持ち悪い。バッカじゃないの」

「ええ!?」


 男子生徒は、いきなり香澄に罵られた。


「てかアンタ、それ何よ」


 香澄は顎で制服を指した。


「あ、これ……」

「ん? ちょっと待って。これ女子の制服じゃない! 下着もある!」

「いや、違う! ちょ、待っ……」


 この時、クラス中の女子が思った事はただ一つ。


「ド変態ぃぃっ!!」


 クラス中に声が響きわたった。

 この時、男子が思った事はただ一つ。


「恥を忍んで言おう。俺にもみせろぉぉっ!!」


 クラス中の男子は、桃菜の制服と下着を持っている男子生徒に飛びかかった。


「ちょ……止めなさい変態どもっ!!」


 その男子たちを一蹴する香澄。


「とにかく! その服はこっちに寄越して」

「あ、ああ……うん……」

「何ちょっと残念がってんのよ」

「イテッ!」


 香澄は制服と下着を渡した男子生徒を、ポカっと軽く頭を殴ってから言った。


「これからあたしら女子は、先生がいなくて預けられないので、この服の持ち主を捜す会議をします。男子は来ないで下さい!」


 香澄はビシッとそう言うと、女子を集めて会議を始めた。


「やっぱ香澄はこういう時に頼りになるね」


 と瑠里香は呟いた。



 一方桃菜は――。


「にゃにゃ……(どうしたものか……)」


 これ以上、家族や和也や桐花に迷惑をかけたくないし、心配かけたくないので、自分が桃菜であることを伝えたい。

 ――のだが。


「にゃんにゃー! (どうすりゃいいのー!)」


 猫桃菜は頭を抱えた。

 方法が思いつかないのだ。

 猫語は通じないし、この身体じゃあ、文字で伝えようにも字もろくに書けない。

 猫桃菜が呻いていると、和也の机の上にあるノートパソコンが、開きっぱなしなのに目が移った。


「にゃにゃ……(そうだ……)」

 猫桃菜は机に飛び乗り、パソコンがホーム画面のままなのを確認した。


「にゃにゃ! (キーボードなら打てる!)」


 猫桃菜はマウスをいじり、メール作成の画面にした。

 本文に


『私は猫じゃないよ』


 とタイプして、宛先に和也のメアドを入力して、送信。


「にゃんにゃ(これできっと、気づいてくれる)」


 猫桃菜は満足げに机から飛び降りたのだった。



 一方、香澄たちは――。


「うーん……誰のだろ……」


 服の持ち主が分からず、皆で考えているところだった。


「ん? これ……生徒手帳?」


 そんな中、制服のジャケットをいじっていた女子生徒が、ジャケットの内ポケットの生徒手帳に気がついた。


「え? 生徒手帳?」


 皆も生徒手帳に集まる。そして、生徒手帳の表紙にある写真と名前を見て、一同驚愕した。


「ウッソ、桃菜ぁ!?」


 香澄が驚いて叫ぶ。瑠里香が慌てて止めた。


「ちょっ、バカ! 男子聞いてるよ!」

「あ、ヤバ」


 実際に男子たちは


「桃菜? って伊吹?」

「マジ? おい、あれ伊吹のだってよ」

「マジかよ」

「おぉ……アイツ結構胸あったんだな……」


 などと言っている。

 香澄はその様子を見て、一つ咳払いをしてから言った。


「とにかく! 何で桃菜が身ぐるみ全部剥いだのかってことよ!」

「香澄、言い方」


 瑠里香が苦笑しながら突っ込む。


「でも確かに、桃菜ちゃんは天然だけど、服を全部脱ぐなんて流石にしないよね……」

「てことは……」


 一人の女子生徒の言葉に、香澄は青ざめながら言った。


「脱がされた!!」

「香澄、声デカい」


 瑠里香がまたもや香澄に突っ込む。

 実際男子たちは


「ぬ、脱がされた……?」

「マジかよ。おい、伊吹服脱がされたんだってよ」

「マジかよ」

「おぉ……想像しちったよ」


 などと言っている。 香澄はその様子を見て、一つ咳払いをしてから言った。


「とにかく! 制服が脱ぎ捨ててあったのと、桃菜の失踪は関係ありそうね」

「確かに」


 香澄の言葉に、瑠里香が同意する。


「そういえばさっき、警察の事情聴取のときに、カズが興味深いこと言ってなかった?」


 いつの間にか男子も会議に参加してくる。


「確かに。なんて言ってたっけ……」


 香澄も突っ込まずに、男子の言葉に頷いた。

 一人の男子生徒が、和也が言っていたことを思い出しながら口にする。


「えっと……伊吹が猫の仮装したとか、逃げたとか……言ってなかったっけ?」

「言ってた言ってた。でも校舎内から出るには、委員会の仕事してた田中か、ユッチが見たことになるけど、見なかったんでしょ?」

「うん」

「ああ」


 香澄の言葉に、田中とユッチこと紗湯さゆが頷く。

 全員「よくわからない」と首を捻ったり考えながら、しばしの沈黙が流れた。

 その沈黙を破ったのは、一人の女生徒の言葉だった。


「桃菜ちゃんがしてたのが、猫の仮装じゃなくて、ホントに猫になってた……なんてね」


 その言葉に、一瞬場が驚いたが、すぐに否定の言葉が発言した女生徒に浴びせられた。


「ないでしょー」

「流石にそれはないな」

「有り得ないべ」

 しかし、香澄と瑠里香だけはあることを思い出して、目を見開いて黙っていた。


「ねぇ香澄? てあれ、どしたの。瑠里香も」

「あ……いや、朝、桐花がカズに桃菜のこと聞いたとき、カズが「『これはボスニャアに引っかかれて、猫化してるわけじゃない』って言ってた」とか言ってたの思い出して……」


 香澄の言葉を瑠里香が継ぐ。


「もしホントに桃菜がそう言ったなら、桃菜がテンパってる状態でしょーもない嘘つくと思えないし、可能性あるかな……って」

「……確かに」


 香澄に話しかけた女生徒が、納得して頷いた。


「しかもカズ、その後に猫を見たって言ってたよね。それも校内で……」

「まさかホントに……」


 瑠里香の言葉に、香澄は驚愕と有り得ないという感情を顔に同居させながら、言った。


「猫化した……?」





 その頃和也は、自宅のパソコンから送られてきた「私は猫じゃないよ」と書かれたメールを見て、首を捻っているところだった。


「何だこれ……俺のパソコンからじゃん」


 和也は道端で少し逡巡した後、こう返信した。


『母ちゃんか?

 悪ふざけは今

 受け付けねえから

 それとも何かあんのか?』


 送信する。

 そして送信してから、和也は呟いた。


「まさかミーナだったりして……って有り得ねえな」


 和也は苦笑してから、失踪したと思われる桃菜を捜すのを再開した。











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