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戻す方法はただ一つですわ

新章スタートです。



「どうすれば戻るかなぁ」

「うーん……」


 和也の部屋にて。

 どうすれば戻るかなど、当然二人は知る由もない。

 和也と猫桃菜は頭を抱えて唸っていた。

 とそこに。


「桃菜が猫ってどういう事!?」


 和也と同じように、部屋にローリングしながら桐花が入ってきた。

 ローリング入室だ。もうそう名付けよう。

 と桃菜は思った。


「うおっ、なんだ佐川か。ビビったぁ」

「ちょっとちょっと! このメールどういう事よ!」


 桐花は驚く和也に構わず、和也の目の前にスマホの画面を突き出した。

 画面には和也が桐花に送ったメールが表示されていた。

 内容は


『伊吹が見つかった。

 信じられないと思うけど、伊吹は俺が飼ってる猫だ。

 とにかく俺の家に来て』


 というものだった。

 和也は「ああ」と一言言ってから、猫桃菜を指差して言った。


「この猫が伊吹だったんだ。前から人間味あるなぁとは思ってたけど……」


 桐花は今気づいたという感じで猫桃菜を見て一言。


「はっ?」


 状況が呑み込めていない様子だ。

 和也はそんな桐花に軽く説明をした。


「だから、この猫が伊吹だったんだ。このメール、伊吹が俺に送ってきたんだ」


 和也自分のスマホのメール受信画面を表示させ、猫桃菜からのメールを表示した。

 桐花は文面を見て、


「これ、本当にそこの猫ちゃんが送ったの?」


 半信半疑という様子で和也を見て、猫桃菜を見た。

 猫桃菜はコクコクと頷いた。


「えっ! 頷いた! 本当にこの猫ちゃんって桃菜なワケ!?」


 猫桃菜はまたコクコクと頷いた。


「ああ、俺も最初は半信半疑だったけど、伊吹が猫になったって事にすれば、伊吹失踪事件の辻褄も合うだろ?」


 和也の言葉に、桐花はしばらく桃菜失踪事件の不審な点を思い浮かべ、和也を見て頷いた。


「確かに……」

「それにコイツ、妙に人間味あるし、確実に伊吹なんだよな……」

「そうみたい……ね」


 桐花が戸惑いながらも納得したところで、和也は本題に入った。


「んで、どうやって戻すかっていう難題が残ってるんだけど……」

「あっ! そうじゃん、どうすんのよこれ!」


 桐花は和也の言葉に焦った様子で応じた。


「さぁ、どうすっかなぁ……」


 今度は三人で頭を抱えることになってしまった。

 何の進歩もない。

 桐花は猫桃菜を見て、何か閃いたように言った。


「そうだ! 桃菜がどうして猫になったのか分かれば、何かしら手がかりが掴めるんじゃない?」

「確かに」

「にゃにゃ!(確かに!)」


 桐花の発言に、二人は同意をした。

 早速桐花が猫桃菜に問う。


「桃菜、どうして猫になっちゃったの?」


 猫桃菜は猫語で答えた。


「にゃんにゃ。にゃ、にゃにゃん(よく分からない。けど多分、ボスニャアに引っ掻かかれたからだと思う)」

「んん……っ、いや何て言ってるか分からないから」

「にゃにゃっ、にゃん!(そうだった、ごめん!)」

「いやだから……」

「にゃんにゃ……(どうすれば……)」

「だから分かんないってば」


 今度は桐花が桃菜の馬鹿さ加減に呆れる番だった。


 結局和也の提案で、和也のパソコンのメール作成画面で桃菜は喋ることになった。

 桃菜はパソコン画面に猫になるまでの経緯を説明した。


「なんか……ベタな理由ね」

「だな」


 桐花と和也は疑いの眼差しを猫桃菜に向けた。


「にゃにゃん!(ホントだよ!)」


 猫桃菜は慌ててそう言った。


「まあ、ここでしょーもない嘘なんて吐かないだろうし、信じるしかないか」

「手がかり……なんも掴めてねえぞ」

「収穫無しね」

「にゃにゃ……(そうだね……)」

「別の方法でいきます?」

「別の方法って?」

「例えば、」

「じゃあ駄目だな」


 早速行き詰まった。

 不意に猫桃菜がキーボードで何やら打ち始めた。

 和也と桐花は文面を見た。内容は


『だったら、私が猫になったきっかけと逆の事をするとかどう?』


 というものだった。


「ああ、確かに」


 桐花は納得したが、和也はある問題を指摘した。


「逆の事ってなんだ?」

「ああ、確かに」


 桐花は全く同じセリフで和也に同意した。


「猫に引っ掻かれるの逆って、猫に引っ掻かれないって事になるだろ? そんなん今だってそうなのに、何も変わりないんだから、違うんじゃないか?」

「ああ、確かに」


 桐花はまたもや同じセリフで同調をした。猫桃菜もその言葉には頷いた。


「でも、もしかしたら戻す方法と関係してるかもな」

「ああ、確かに」


 和也はさっきから同じことしか言わない桐花にじと目をしながら言った。


「佐川、お前真面目に考えてる?」

「真面目だよ?」


 真顔で返す桐花に、和也は無言で苦笑いするしかなかった。

 キャラの掴みにくいヤツである。







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