91話 バーリルの反撃
シンとバーリルは戦いながら砦に囲まれた広場のような場所に移動していた。
空はもう日が沈み始めており、夕暮れで赤かった。
「いくぞ!」
シンはバーリルへと走り出した。バーリルもシンへと迎え撃ち、両者共にパンチを放った。
バーリルが放ったパンチはシンの頬に直撃し、シンが放ったパンチはバーリルの顔の横をかすり、直撃はしていなかった。
そのとき、シンはふと気がついた。魔人化の効果が解けたことを。
バーリルはシンの頬を殴った直後、シンを宙へ蹴り飛ばした。シンは防御が間に合わず、蹴り上げられてしまった。
魔人化の消失、頬への痛み、それがシンの意識を揺らがせていたが、シンは宙で意識をハッキリと取り戻した。
しかし、シンが意識をハッキリと取り戻す前に、バーリルが宙にいるシンの頭を片手で掴んでいた。
するとバーリルはシンの頭を掴んだまま、急降下し、シンを頭部から地面に叩きつけた。
シンは地面に倒れ込んでしまった。頭からは血がゆったりと流れていて、とても戦闘できる状態ではなかった。
しかし、バーリルは容赦せず、仰向けになって倒れているシンにジャンプしてから腹部を踏み付けた。
シンはその攻撃を吐血しながら受け、さらにもう一発、踏み付けられた。
「あああッ‼︎」
バーリルはシンへとトドメを刺そうと、手のひらをシンへ向けた。すると、バーリルの手のひらに炎の塊のようなものが灯った。
「お前と戦うのは楽しかったよ。じゃあな」
バーリルはそう言いながらその炎を放とうとしたとき、バーリルの背後から江川が斬りつけようと襲いかかっていた。
「ーーッ‼︎」
バーリルは背後からの攻撃に気づき、攻撃を回避し江川を蹴り飛ばした。
江川はすぐに態勢を整えるとバーリルは飽き飽きとした表情でこう言った。
「またお前か。懲りないやつだ、お前と俺の戦力の差はさっきわかっただろうに」
江川は黙りながらバーリルへと走り出した。しかし、バーリルは瞬間的に江川の背後に移動し、江川の後頭部を片手で掴み、江川の頭を地面に叩きつけた。
「ぐああッ‼︎」
「よし、じゃあ、まずはお前から消してやろう」
バーリルはそう言うと、江川に手のひらを向け、先ほどと同じ炎の塊を生み出し、それを江川へ放とうとした。
しかしそのとき、バーリルは何者かが放った衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。
バーリルは態勢を整え、衝撃波が飛んできた方向に目線を向けると、そこにはリケッドと朱希羅がいた。
「そこまでだ化け物。ここからは俺が相手だ」
朱希羅はそうバーリルへと言い放った。
バーリルはシンや江川、そして朱希羅を見てこう答えた。
「次から次へと、うっとおしい奴らだ」
「まぁそう言うな。リケッド、お前はシンと江川を安全な場所に移せ。バーリルは俺が闘る」
「りょ、了解ッス」
リケッドは朱希羅がバーリルへと放つ殺気に怖じけながら、シンと江川を抱えその場から去った。
そこに残された朱希羅はバーリルへと言い放つ。
「さて、やるか」
その頃、白龍連合本部の地下室では松田隼人が悪魔の継承が保存されている場所を見つけ出した。
悪魔の継承はかなり硬度があるガラスケースに保存されており、簡単には取り出せそうになかった。
「やっと見つけたぜ」
松田隼人はそのガラスケースを割ろうとした時、その地下室に4人の白龍兵が現れた。その白龍兵たちはうめき声を上げながら松田隼人へと襲いかかる。
松田隼人は白龍兵たちの攻撃を回避した。
「なるほど、そういうことね」
松田隼人は白龍兵たちの様子を見てすぐにわかった。白龍兵たちは身体の一部が悪魔化していたのだ。
しかし、白龍兵たちの意識は曖昧な状況、つまり悪魔化に対して身体が上手く耐えていない状態だった。
「うぅ……あぁあ‼︎」
一人の悪魔化している白龍兵が松田隼人に向かって襲いかかると、松田隼人はその白龍兵を蹴り飛ばし、そしてこう言い放った。
「来いよ、雑魚ども」