86話 滅ぶ精神
(デュージルは自らを犠牲にしてまでも俺をジウルへ投げ飛ばすつもりだったのか⁉︎)
デュージルに投げ飛ばされたゴルガはそう気づくと、投げ飛ばされた先にはジウルが刀を構えていた。
「いくぞっ‼︎」
ジウルは投げ飛ばされたゴルガの左目と右耳を斬り付けた。ゴルガの右耳からは大量の血が流れ、左目をゴルガは手で抑えながら地面へと倒れ込んだ。
その姿を見てジウルはデュージルに話しかける。
「ハァ、ハァ。……やったな、デュージル」
「あぁ……、だが、俺はもう限界だ……」
デュージルがそう返事を返した時には、もうデュージルの精神は消えかけていた。
「恐らく、俺はしばらく表に出ることは無い。後は……みんなに任せよう。ゴルガの精神もまだ消えたわけじゃ無い……油断するな、ジウル……」
「あぁ、さっさと始末してーー」
ジウルがゴルガにトドメを刺そうと後ろを振り向くと、背後からゴルガがジウルの身体を刀で貫いていたことにジウルは気づいた。
「な……に……⁉︎」
「屈辱だな。腕も無く、足も無いお前らにここまで傷付けられたとは。大人しく消えていればいいものを……」
ゴルガはそう言うと、刀を勢い良くジウルの身体から引き抜いた。
身体を貫かれたジウルの精神は徐々に消え始めた。
その頃、コズムとリケッドが戦っている戦場に矢崎朱希羅が現れていた。
朱希羅はリケッドが身につけている悪魔の鉄拳を見てこう問いかけた。
「お前が隼人の知人のリケッドか」
「俺の名はリケッドだが、松田隼人に悪魔の鉄拳を持っていろと言われただけッス。知人でも何でも無い」
「悪魔の鉄拳は同じ三大悪魔武器の悪魔の継承と悪魔の邪眼の気配を察知し合うことができる。俺たちがここに来れたのもそのおかげだ」
「で、お前たちは黒虎連合の敵なのか?」
「いや、俺たちはお前ら黒虎連合を援護するつもりだ。今も苦戦しているんだろ?」
そう朱希羅はリケッドに問いかけると、リケッドはコズムを睨みつけて答えた。
「いや、大丈夫だ。あなたはそこで見ててくれ」
リケッドはそう言いコズムへと走り出すと、コズムは戦闘態勢を取り、リケッドを迎え撃った。
「二人でかかってくれば良いものを!後悔するぞ!」
「俺一人で充分ッス!」
リケッドはそう言いながらコズムへとパンチを仕掛けると、コズムはリケッドのパンチを両手で掴み取り、リケッドを空中へ投げ飛ばした。
空中へ投げ飛ばされたリケッドはそのまま降下しながらコズムへと再び攻撃を仕掛けた。
しかし、コズムはリケッドの攻撃を避け、着地寸前のリケッドを殴り飛ばした。
「よし、大体実力はわかった。代われリケッド」
リケッドは何も言うことができぬまま、代わりに朱希羅がコズムの前に立ちはだかった。
「今度はお前か。良いだろう、来い」
「リケッド、今のお前の戦闘スタイルはとても単純なのかもしれん。柔軟性を極めたパターン、一撃を極めたパターン。この二種類しかない。その二種類をどう使うのか、教えてやる」
朱希羅はそうリケッドに言うと、コズムへと走り出した。
コズムは走ってくる朱希羅を見て防御の構えをとったが、朱希羅はコズムの目の前で立ち止まってしまった。
「え?」
すると瞬時に朱希羅は右ストレートの重い一発を放つ態勢に切り替えた。それを見たコズムはさらに防御を強める。
(こんな直接ストレートを狙うのか⁉︎いや、これは⁉︎)
リケッドは黙ってその様子を伺っていた。
右ストレートが来ることを知り防御を強めたコズムだが、朱希羅が右ストレートを放つ前に思わぬ方向からパンチがコズムを襲い、防御を崩し、朱希羅が放った右ストレートがコズムの頬に直撃した。
コズムは朱希羅によって建物の壁まで殴り飛ばされてしまった。
「さぁ、リケッド。今からこの戦い方を習得してもらおうか」