7話 時来たり
あけましておめでとうございます。
かなり遅い投稿となってしまいましたが、
今後とも、よろしくお願いします。
「くそ、逃げられたか……‼」
松田隼人に逃げられた俺はそう言うと、ユリシスとガルドのことを思い出した。
「あいつらは無事なのか?」
俺はそう思い、聖堂を後にしようとしたその時、聖堂の入り口から二人の人物が現れた。
ガルドとユリシスだった。
「遅くなってすまなかったな。松田隼人は?」
「無事だったか!すまん、松田隼人は逃した」
「……そうか。まぁ、仕方ない。松田隼人相手に生きているだけでも幸運だ。ユリシス、さっそく儀式の続きを始めてくれ」
「…………」
「……ユリシス?」
「わかりました」
ユリシスはそう言い聖堂の中央に、俺はガルドの近くに歩いて行った。
そして、俺とユリシスのすれ違いざまに、ユリシスは小さな声で俺にこう言った。
「気をつけて」
「え?」
俺はそう言い、ガルドのそばでユリシスの儀式を見ていた。
すると、ユリシスの手元に光り輝く小さな鍵が出現した。
「時来たり」
ガルドは突然、そう呟いた。
俺は違和感を感じ、後ろを振り向いたとき、ガルドが俺の背後から襲いかかっていた。
「……ガルドッ‼」
不意を突かれた俺は聖堂の壁に殴り飛ばされてしまった。
そして、ガルドはユリシスに言う。
「ククク、思い通りだ。その鍵さえ手に入れればッ……!」
「この鍵を手に入れて、どうするのですか⁉あなたはこの鍵を持ってはいけない!」
ユリシスは鍵を握りしめガルドから距離を取りつつ、そう言った。
するとガルドは答える。
「その鍵は“女神の血を引く者”のみが扱うことを許された“聖地”への鍵……。俺は何年も前から聖地を探し求め、そしてようやく見つけることができた。この天魔の聖堂の最深部をな。そして、その最深部への扉を開く唯一の鍵、それはユリシス・ペルセポネが召喚できる“鍵”ということ。もう俺の計画を完遂するまであと少しだ!」
「んなことさせるか!」
俺はガルドの前に立ちはだかり、戦闘態勢になった。
「てめーが俺やユリシスを利用したって言うなら、ここでぶっ倒してやる!」
「正直、松田隼人がここに来るのは想定外だったが。まぁ、良い。計画は狂うことなく流れている。現にその鍵が、俺の目の前にあるからな」
「計画がどうとか、ベラベラうるせぇぞ!」
俺はそう言い、ガルドに向かって左手の手のひらから雷撃を放った。
「ッ⁉魔法結晶無しで魔術を!」
ガルドは俺の不意打ちに少々驚き、雷撃をヒラリと避けた。
しかしその瞬間、剣を構えた俺がガルドへと攻撃を仕掛けていた。
(雷撃を避けた分、防御は間に合わねぇぜ!)
「そうだな。防御は間に合わなそうだ」
するとガルドは短剣を構え、俺にカウンターを仕掛けてきた。
金属音を放ちながら剣と短剣を交え、両者互いに距離を取った。
しかし、俺は距離を取った瞬間、すぐにガルドに向けて雷撃を放った。
ガルドはまたその雷撃を避けようとしたが、ガルドはその雷撃を避けきれず、かすり傷を負った。
(かすり傷でもいい!かすり傷だけでも、少しでも雷撃によるダメージを受ければ、動きは鈍くなる‼)
俺はそう認識し、ガルドに攻撃を仕掛けた。
ガルドは俺の思ったとおり、身体は思うように動けず、俺はガルドの右肩を剣で突き刺した。
「つい先ほどまで魔術を使うこともできなかったガキが……。魔力の源である魔法結晶も無しに魔術を発動させ……魔術の属性についても即座に理解するとは……なかなかのレアだな……」
ガルドはそう言い、息絶えてしまった。
「……?」
俺はガルドが息絶えたことに疑問を感じた。急所は外したはず……。
即死しない程度の攻撃にも関わらず、ガルドは息絶えたのだ。
(この程度で死ぬはずが無い……。まさか……)
俺がそう思った。そのときだった。
「気は済んだかね」
「ッ‼⁉」
俺は声が聞こえた方向を振り向いた。
そこには気絶したユリシスを片腕で抱えたガルドが立っていた。
「ゆ、ユリシス!」
「女神の血を引く者はこの世にある神器を肉体と同化させる能力があるらしいが。どうやらこの女、大切な鍵を自らの身体と同化させたらしいからな。この女はしばらく預かっておこう」
「行かせるか‼」
俺は再度出現したガルドに向け雷撃を放ったが、ガルドは黒い箱を取り出した。
(人間界に逃げるつもりか‼)
黒い箱が開くその瞬間、ユリシスは微かに意識を取り戻した。
俺もそれに気づいた。
そしてユリシスから、小さな光が、俺の足下に落ちた。
その直後、ユリシスとともに、ガルドは姿を消してしまった。
黒い箱から放出される煙に包まれて……。