80話 コギトとコズム
戦場に現れたリケッドを見て、敵の一人がもう一人に問いかける。
「兄者、こいつ何者だ?俺の鎌を拳で止めたぞ」
「そいつは閃光と呼ばれている黒虎連合でも上級レベルの戦士だ。油断するな」
するとリケッドは拳で止めていた敵の鎌を掴むと、自分の方へ引き寄せその敵を殴り飛ばした。
殴り飛ばされた敵はロビーの床に着地し、リケッドを睨みつけた。
「……このコギト様を殴るとは。痛えじゃねえか。この野郎」
「だから油断するなと言ったのだ」
コギトという名の敵は殴られた頬を手で抑えながらそう言っていると、リケッドは二人の敵の姿を見て、ふとある噂を思い出した。
「白龍連合にいる殺人兄弟が、白龍連合本部の守護者としてずっと守り続けていたと聞いたことがある。お前たちが“コギトとコズム兄弟”か」
「ほぅ、俺たちなかなか有名らしいぜ兄者」
コギトは鎌を肩に掛けながらそう話しかけるとコズムが答える。
「弟者、そうやって油断するから先ほどのように叩かれるのだ」
「もう油断しねーよ。こいつは俺がきっちり殺すからな」
コギトはそう言いながら鎌を構えると、リケッドは戦闘態勢を取り答えた。
「そう簡単にはいかないッスよ」
リケッドはそう言うとコギトへと走り出した。コギトも鎌を構えてそれに応戦すると、コギトは鎌で斬りかかり、リケッドは拳で殴りかかった。
拳と鎌が金属音を立てながら衝突し合うと、コギトがその拳を見て問いかける。
「その鋼鉄のグローブ、悪魔の鉄拳というやつか。松田隼人が持っているとガルド様から聞いたが……」
「まぁ、知り合いから借りたのさ」
リケッドはそう言い、コギトの鎌を片手で弾き飛ばすと、もう片方の拳でコギトを殴り飛ばした。
殴り飛ばされたコギトはソファとテーブルに直撃し、すぐに態勢を整えた。
「痛ってーな‼︎このガキ‼︎」
コギトは頭に血をのぼらせ、リケッドへと鎌から斬撃波を放った。リケッドはその斬撃波を回避するとすぐそこにコギトが鎌を振りかぶって斬りかかろうとしていた。
「死ねぇ!」
「……っ‼︎」
リケッドは素肌で刃物を受け流し、コギトへと強烈なパンチを放った。
「俺は刃物を受け流すことはできない。などと思ってたんスか?」
「貴様、まさか刃物をも受け流すことができるというのか⁉︎」
コギトとリケッドの様子を伺っていたコズムは考え込む。
(受け流し。コレを上手く利用すれば最強の防御となる武術。ボクシングでも取り入れられたりするが、まさか打撃攻撃に有効な受け流しを刃物で受け流すとは。相当な集中力だろう。理論上、不可能ではないが成功する確率は低い。それをマスターしたのか、奴は)
コズムはリケッドの前に立つと、コギトへと言った。
「代われ、お前ではこいつを倒せん」
コギトからの返答はなかった。コギトは気絶していたのだ。コズムは戦闘態勢を取りリケッドへと呟いた。
「俺も武術を得意とする身だ。どちらの武術が上か、勝負しようじゃないか!」
「望むところ。ッスよ」
その頃、司令室へと向かっていたトネイルたちに、あの怪物が迫っていた。
トネイルはいち早く何かが迫ってくることに気づき、拳銃を構える。
「どうしたトネイル?敵か?……ビューカーがまた来たのか⁉︎」
「いや、確かに殺気を感じるがビューカーの殺気ではない。殺気の方向は……後ろに!」
トネイルはそう言い、背後にいる隊長の方向を振り向いたが、そこには隊長が何者かによって首を喰いちぎられた跡が残っていた。
「……っ‼︎」
トネイルはすぐに隊長の首を喰いちぎった者が残したであろう血の跡を目で辿り、その何者かを発見した。
バーリルだった。バーリルが天井に張り付いていて、隊長の頭を咥えていたのだ。
「お前は黒虎連合のサブ拠点をほぼ壊滅させたバーリルとか言うガキだったな」
「オマエ……コロス……!」