69話 バーリル
黒虎連合は白龍連合本部の襲撃作戦を企てているその頃、白龍連合は黒虎連合の領地略奪を試みていた。
白龍連合本部の地下牢で、ガルドと白龍兵が牢屋に閉じ込められている男に話しかけていた。
「ジラ様からの出撃命令だ。出番だぞ、バーリル」
「……出……撃……?人……殺せる……?」
「殺していいのは黒虎連合だけだ」
「人……殺したい、殺したい、殺す!」
バーリルという牢屋に閉じ込められている少年は牢屋の外にいるガルドに向かって走りだし、牢屋の檻を握り締めた。
その瞬間、バーリルの身体に電流が走り、バーリルはその場に倒れ込んでしまった。
「あああああああ‼︎‼︎‼︎」
「その檻には電流が流れていることは知ってたろう。また一時間後に迎えに行く。その時まで感電死していなければいいがな」
「ゔゔゔゔゔ……」
バーリルという少年は電流が流れている身体をピクピクさせながら、鬼のような形相でガルドを睨みつけていた。
ガルドと白龍兵はその場を後にした。すると白龍兵がガルドへと問いかけた。
「大丈夫なのですか?年齢は6歳、外見は子どもだとしても、アレは、まるで怪物……」
「まぁ、そうだな。だが、白龍連合としてはアレは充分な戦力に他ならない」
その頃、とある洞窟を白龍連合を脱退したセツヤたちが住処としていた。
セツヤは脱退した理由を同じパーティである三人に説明することにした。
「僕が黒虎連合のボスであるキシラ・ホワイトを殺したことにより手に入れた物、それが“運命の鍵”だ。この指輪に付いている石は7ヶ月後の皆既日食の日に石を持つ者を“約束の地”へと導いてくれる。白龍連合を抜けた理由も、この石をすぐにジラ・バーバリタスやガルドに奪われてしまう可能性があるからだ」
「じゃあ、セッちゃんはその“約束の地”ってのに行ったら何をするつもりなのさ?」
ロン毛の男はそう問いかけると、セツヤは“運命の鍵”と呼ばれる石が装飾された指輪を指に装置しながら答えた。
「絶対的な力を手に入れ、この世の全指揮権を僕が握る。そして僕は、“神”となる」
「神、ねぇ。なかなかぶっ飛んでんね」
ロン毛の男はそう言うと、サングラスをかけた屈強な肉体の男はセツヤに問いかける。
「なら、今はその7ヶ月後をこの洞窟で密かに待つということか」
「そうだ。7ヶ月後の皆既日食までだ」
セツヤ率いるパーティはその洞窟で密かに7ヶ月後を待つことにしていた。
白龍連合の本部では、再びガルドと白龍兵が地下牢にいるバーリルの下にやって来ていた。
「出番だぞバーリル」
ガルドは地下牢の扉を開けると、バーリルという少年はゆっくり立ち上がり、ガルドへと歩き出した。
「ガルド様!お気をつけて下さい!」
「大丈夫だ。今のバーリルは襲ったりはしない」
ガルドはそう言いながら、扉を開けていた。バーリルは無言でその牢屋から出ると、ガルドはバーリルに指示を出した。
「今から本部で編成したパーティとともに黒虎連合の領地へ向かってもらう。わかったか」
「わかりました」
白龍兵はこのとき、異変を感じていた。
バーリルはまるでさっきとは別人のようだった。
あの凶暴な怪物のような姿は一切見せず、無表情で冷たい目をした、ただの少年だったのだ。
(バーリル……この子は一体……?)
白龍兵はバーリルのその変化にとても不安になっていた。