64話 松田隼人の過去ー中編ー
(身体が動かねぇ!)
松田隼人の身体は地面に押さえつけられているかのように動けなくなってしまっていた。老人は松田隼人と同じ悪魔の邪眼で松田隼人の身体を重くしたのだ。
「てめぇは何者だ!こんなとこで何してる!」
身動きが取れない松田隼人はそう問いかけると老人は堂々と答えた。
「私の名はジラ・バーバリタス。今から三代目悪魔王を暗殺する。そして悪魔界の王政の実権を我々が握り、悪魔界を支配する」
「そんなことさせるか!」
松田隼人はそう答えたとき、狙撃の準備をしていた軍人のような男はジラ・バーバリタスに報告した。
「スピーチが始まりそうです。いかがいたしましょう」
「私が合図を出したら、三代目悪魔王を撃ち殺せ」
その頃、三代目悪魔王レアルのスピーチ公演を待っている山田真司やマースたちは悪魔城の前で公演の時間を待っていた。そこにはマースたちの他に大勢の悪魔たちがいた。
スピーチはどうやらレアルが悪魔城のテラスからマイクで放送するらしい。
しばらくそこで待っていると三代目悪魔王であるレアルが城のテラスに姿を現した。
その瞬間、大勢の民衆たちが拍手しだし、レアルの演説は派手にスタートした。
真司は城の前から改めてレアルのことを見上げると、ふと呟いた。
「あいつも女らしくなったなぁ……。そういえば隼人はどこだ?」
「あれ?いないな」
ようやくマースたちは松田隼人がいないことに気がついた。
時同じく、悪魔城から少し離れた丘の上からは狙撃銃がレアルのことを標的に捕らえていた。
「標的捕捉。いつでも狙撃できます」
「よし、撃て」
ジラ・バーバリタスがそう命令すると、軍人のような男は狙撃銃から銃弾を放った。
しかし、その銃弾は空中で静止した。
松田隼人が悪魔の邪眼で銃弾の動きを止めたのだ。
それに気づいたジラ・バーバリタスは金色の粒のような物で静止した銃弾を破壊し、松田隼人へと近づいた。
その一方、ついにレアルによる演説が始まろうとしていた。
「皆さん、静粛に。今日という日が悪魔界に訪れることを心より感謝します。思い返して見れば11年前。巨大隕石落下により我々は大きな傷を受けました。我々だけではありません、この街、この城、この世界が大きな痛みを受けたのです」
レアルが演説をしている途中、悪魔城から少し離れた丘の上では、松田隼人の必死の抵抗により、何とか狙撃を阻止していた。
「なるほど、銃弾そのものを重力変化で止めたのか。いくら銃弾を撃っても同じということか」
ジラ・バーバリタスはそう呟きながら地面に這いつくばっている松田隼人へと近づくと、一枚の布を手に取った。
「なら、私も重力変化の起源力である眼そのものを封じることにしよう」
「眼を奪うつもりか⁉︎」
松田隼人は眼を取られまいと目をぐっと閉じたが、ジラ・バーバリタスは眼を取るのではなく、松田隼人に布で目隠しをした。
「止める物が見えなければ止めることはできまい」
「ほどけ‼︎銃を撃つんじゃねぇ‼︎」
松田隼人は必死にそうジラ・バーバリタスに言ったが、ジラ・バーバリタスは軍人のような男に狙撃命令した。
「ただ撃ってもつまらん。派手に撃て。サイレントも解除して、銃声を轟かせろ」
「了解」
軍人のような男は再び狙いを定めた。
その命令を聞いた松田隼人は必死に抵抗しようとしたが、ジラ・バーバリタスの重力の力で何もすることができなかった。
「やめろおおおおおお‼︎‼︎‼︎‼︎」
松田隼人のその叫びとともに、銃弾を放った銃声が辺りに響き渡った。