5話 シンVS隼人
(こいつ……魔法結晶無しで魔術を……!)
松田隼人はそう驚いていた。
俺は魔術が使えるなんてこと知らなかったし、自分を守ろうとしただけだったのだが、まさか、こんな技が出るとは思いもしなかった。
松田隼人は再び死神の黒剣を構え、俺に言う。
「やるじゃねぇか、魔法結晶無しとはな。だが、そんなもので俺は倒せないぞ」
「やってみなけりゃ、わからねぇさ!」
俺はそう言うと、左手を松田隼人へ向け、再び雷撃を放った。
(この雷撃を放つコツはつかんだ!この技を使いこなせれば、こいつを倒せる!)
しかし、松田隼人はその雷撃をひょいと避けると、今度は松田隼人が俺に向かって走り出した。
(攻撃パターンは読めている‼真ん前か、真後ろからだろ‼)
俺はそう思い、剣を構えると、松田隼人は俺の正面から攻撃を仕掛けていた。
「予想通りだ!」
「どうだろうな」
松田隼人はそう言い、俺に向け剣を振り下ろした。しかし、俺はその攻撃を避け、カウンターを仕掛けようとしたが……。
俺の身体はピクリとも動かなかった。
「なにッ‼⁉」
俺はそう言いながら、松田隼人が振り下ろした斬撃によって、右肩に剣を突き刺された。
「ぐあぁぁぁぁぁ‼‼」
「俺をなめるな。俺の攻撃パターンはいくつもある。お前の予想以上にな」
「俺の足が動かなかったのも……お前の技か何かか⁉」
「俺の眼は少し特別でな、悪魔の邪眼という眼だ。この眼は視界に写った重力を自在にコントロールすることができる」
「それで俺の身体を重くしたのか……!」
俺はそう納得すると、松田隼人に問いかけた。
「お前は、人間界や悪魔界を救った英雄なんだろ⁉なんでこんなことをする‼」
「お前には関係ない。ただ、邪魔する奴は殺すだけだ」
「人間界に出現した悪魔界を消すことが、お前の邪魔になるってことか⁉」
「そんなことはどうでもいい。俺はユリシス姫をよこせと言ったんだ」
「なぜユリシスを欲しがる⁉」
「お前は何も知らないのだろうが……、そんなこと、死んでしまえば同じことだ」
松田隼人はそう言い、俺の右肩に突き刺した剣をさらに奥に突き刺した。
「ぐああああああ‼‼」
「お前はユリシス姫を守るつもりなんだろうが……、お前のその力では、誰も守れん」
「……ッ‼‼」
誰も守れない。
その言葉を聞いた途端、俺はセツヤを思い出した。
(そうだ……俺は……無力だ……。だけど、あいつだけは……)
そのとき、松田隼人は異変を感じ、俺の肩から死神の黒剣を抜き、俺から距離を取った。
「……これほどとはな」
「俺は……あいつを……守りてぇんだ‼‼」
そのとき、俺の身体を覆うように魔神が宿った。
その魔神は、俺の怒りと悲しみが反映されたかのような姿だった。