61話 平和を望んだ英雄
北側拠点での灯城の襲撃。本部でのセツヤ率いる白鷹パーティの襲撃は黒虎連合に大きなダメージを与えた。
何よりも黒虎連合のボスであるキシラ・ホワイトがセツヤによって殺害されたことは、黒虎連合に大きな影響を与えた。
黒虎連合はその戦いの後、キシラ・ホワイトの亡骸を黒虎連合の総員で見守りながら、墓の中に埋めることにした。
キシラが率いていた黒将パーティのハビルは涙を流しながら呟いていた。
「セツヤとか言ったか……絶対、俺が殺す……!」
その姿を見ていたシンは何も言えなかった。
セツヤは友達のはずだ。だが、これ以上人を傷付け、人を殺めるのであれば、セツヤは本当に排除しなければならないのでは。とシンは心底思っていた。
キシラ・ホワイトの埋葬を終え、シンが所属する豪蓮パーティは灯城と激戦を繰り広げた北側拠点へと訪れた。
修復作業が順調に行われていて、とても活気的になっていた。
そんな北側拠点に黒虎連合の者ではない墓が一つある。灯城の墓だ。
シンは灯城の亡骸を黒虎連合の領地内に埋めたいと提案したのだ。
シンは灯城の墓の前に立ち、そっと花を添えた。
「太陽と月が重なる時、それは皆既日食だ。次の皆既日食は後7ヶ月後。7ヶ月後に、この戦いは終わるのだろうか」
「終わらせるのさ。俺たちで」
デュージルはそう答えた。デュージルの人格は灯城との戦い後、元の人格に戻っていたのだ。
豪蓮は灯城の墓を背にして再び歩き出した。7ヶ月後の戦いへ向けて。
そして背を向けたその墓には、
【敵の身で有りながらも、平和を望んだ英雄】
と記されていた。