59話 決着を付ける時
「シン、俺が奴の隙を作る。隙を見て奴を叩け!」
「了解!」
デュージルは灯城へと高速で走って行った。その速さにはカウンターを仕掛ける余裕は無く、灯城はデュージルの攻撃を避けるのに精一杯だった。
とはいえ灯城に隙が生まれることはなく、灯城はデュージルの攻撃をほぼ紙一重で避けていた。
その状況を見ていたシンはデュージルの背後に立ち、デュージルより上にジャンプして灯城へと手を向けた。
「どけ‼︎デュージル‼︎」
デュージルはシンのやろうとしていたことに気づき、攻撃を止めてその場から離れた。
シンは灯城に向かって広範囲の雷撃を放とうとしたのだ。デュージルが灯城に接近していたことにより、できるだけ近距離で放つことができた。
しかし、灯城はギリギリその雷撃を左にステップして避けた。
灯城は反撃をしようと動こうとしたとき、灯城の目の前には刀を構えたデュージルが立っていた。
デュージルはわずかな隙が生まれた灯城の右腕を斬り落とし、灯城に向かって突きを放ったが、灯城はすぐにその場から離れてしまった。
とはいえ、灯城は片腕を失ってしまったのだ。
拳で戦う灯城にとっては不利な絶望的な状況だ。
しかし灯城は余裕な表情を見せ、倒れているマラフの死体のそばに歩いて行った。
すると灯城はマラフの切り落とされた悪魔の右腕を拾い、自分の右肩にくっ付けた。
「悪魔の身体は再生能力が良いらしくてな。一度切断されたものでも、またすぐくっ付くらしい」
灯城はそう言いながら数秒の間、右肩にマラフの右腕をくっ付けた状態で維持し続けていると、接着剤でくっ付けたようにマラフの右腕が灯城の右肩にくっ付いた。
灯城は移植したマラフの右腕の手首を捻っていた。
「悪魔の鱗で覆われた腕。これならその刀も弾くことができる。さぁ、続けよう」
灯城はそう言うと、鱗で覆われた硬い腕を武器にデュージルへと走り出した。
デュージルも刀を構えてそれに応戦した。
刀と悪魔の右腕が交じり合い、両者一歩も譲らなかった。
刀と悪魔の腕は絶えずに金属音を立てながら衝突し合っていた。
そんな二人の戦いにシンが加わった。シンもアザエルが変化した剣を構えて灯城へと攻撃を仕掛けたが、悪魔の右腕を手に入れた灯城は二人同時に相手をすることができた。
(くそ!倒せねぇ‼︎)
シンは心底そう思ったそのとき、突然灯城の動きが一瞬だけ静止した。
デュージルはその隙を見て灯城の右腕と左腕を切断し、シンは灯城に向け力一杯のパンチを放った。
「うおおおおおおお‼︎」
シンは雄叫びを上げながら灯城を殴り飛ばした。