58話 金刀
「キャプテン・デュージル?聞かない名ですが、どれ、私が相手をしてあげましょう」
マラフはデュージルへそう言うと、デュージルは金色の刀を構えて問いかけた。
「マラフというのか、お前は身体を悪魔に変化できるらしいな」
「よく知っているじゃないですか。そうです、貴方が持っているような、ただの刀では私の悪魔の皮膚は斬れませんよ!」
マラフはそう言いながら、デュージルへと走り出し、接近戦を仕掛けた。
しかし、デュージルは一瞬でマラフの背後に瞬間移動した。その時には既にマラフの右腕が切断されてしまっていた。
「ぎゃああああぁぁぁぁ‼︎‼︎」
マラフの右腕は赤色と緑色が混ざったような色の血を飛び散らせながら、地面へと落ちた。
右腕を切断されたマラフは、すぐに背後にいるデュージルに攻撃を仕掛けようとしたが、背後を振り向くとそこにデュージルの姿はなかった。
「何処を見ている」
マラフはふと気がつくと、自分の首元に刀を添えられていたことに気づいた。
そして気付いた時には既に、喉笛を斬られてしまっていた。
マラフは喉から血を吹かせながらその場に倒れてしまった。
「悪魔と同じ身体といえど、喉を切られれば即死してしまったか」
灯城はそう言いながら、デュージルを睨みつけた。デュージルは灯城を睨みつけ、こう問いかけた。
「次はお前か」
「フッ、少しできるようになったからと調子に乗るな。今までその刀は封印していたと聞いたが。何があった?」
「……」
デュージルはそう問いかけられると、今さっきまでの心境を思い出した。
テントに待機していて、トルシャが戦場へと向かった直後のことだった。
(‘‘部下が死ぬ姿は見たくない’’か。確かにそうだな。上司が部下を守るのは当たり前のことだ。だが、あの刀を使えば。俺は……)
(交代しろ。今のお前では仲間も、連合も守れはしない)
(俺と交代してどうするつもりだ)
(どうするつもりもない。戦うだけだ)
デュージルの心境で二人の会話が行われた後、医療班の班員がデュージルへと問いかけた。
「部下たちが行っちまったけど、アンタは行かなくていいのかい?」
「すぐに行くさ。白龍連合ともケリを付けたいしな」
デュージルはそう言うと、テントから出て行ってしまった。
そして現在に至る。
灯城を前にしたデュージルはシンに声をかけた。
「シン、俺一人では奴を倒すことは困難だ。力を貸せ」
「そのつもりさ」
シンはそう言うとデュージルの隣に立ち、灯城の前に立ち上がった。
灯城は二人に向け言い放った。
「この戦いも飽きてきた。もう決着を付けよう‼︎」