53話 虎とムチ
「切れたな。リミッター解除の効果が」
リミッター解除の効果が切れてしまったリケッドに灯城はそう言うと、リケッドの背後から二本の剣で斬りつけた。
「ぐああああ‼︎」
斬りつけられたリケッドは痛みを感じながらも、背後を振り向き、灯城にパンチを放ったが、灯城はそのパンチを軽く避けてしまった。完全にリケッドの攻撃は見切られていたのだ。
「ここまでよく頑張ったものだ。初めてのリミッター解除で、リミッター解除した俺と互角に闘り合えたのだからな。だが、もうここまでのようだな」
「くそっ‼︎」
リケッドはトドメを刺されてもおかしくない状況にいた。しかし、灯城はトドメを刺さず、その場から離れた。
「二人か。物陰に隠れても無駄だ。出てこい」
灯城は崩れた建物の陰に向かってそう言うと、その建物の陰から二人の戦士が灯城の前に現れた。
それは黒虎連合の射撃の虎と謳われているトネイルと、パーティ糸那に所属する鎖状のムチを操る女戦士のクラネだった。
その二人を見て、灯城は呟いた。
「射撃の虎と、女一人か」
「女一人ですって⁉︎よく覚えておきなさい!アタシの名前はクラネ!舐めてると死ぬわよ!」
「敵軍に自らの名を易々と口にするな。と教わらなかったのか?随分、威勢の良い小娘なことだ。かかってこい」
灯城はそう言うと、トネイルは二本の拳銃を構え、灯城に向けて銃弾を何発か放った。
灯城は二本の剣で銃弾を何とか弾いていた。
(さすが射撃の虎だ。そしてあの眼。空気の流れと相手の動きを予測させる魔鳥の眼球。また一部の人間は虎の眼とも言うらしいが……)
トネイルは怯まず銃弾を撃ち続けた。
銃弾を二本の剣で弾いている灯城に向けて、クラネは鎖状のムチを飛ばした。しかし、そのムチの飛んで行った方向は灯城の少し右側で、灯城が避ける必要もなかった。
灯城はそのままトネイルが撃ち続ける銃弾を弾いていた。
「避ける必要が無いと思ったら、大間違いよっ‼︎」
クラネはそう言うと、鎖状のムチを切れ細やかに扱い、灯城を巻きつけた。
巻きつけられた灯城はクラネに向けこう言った。
「なるほど、避ける必要が無いと見せかけた騙しの巻きつけ方か。少しはやるようだが。……まだ甘い」
トネイルはすかさず銃弾を灯城に向け放ったが、灯城は銃弾を鎖状のムチでガードし、自らの身体に巻きつけられたムチを握りしめ、そのままクラネを振り飛ばした。
クラネは崩壊した建物に叩きつけられ、ムチを手放すと、灯城は自らの身体に巻きつけられたムチを解きながらこう言った。
「拘束できたとでも思ったか。俺の腕力があれば檻をこじ開けることも容易い」
(まぁ、確かにあの馬鹿デカイ大剣を振り回せるような腕力あるのなら納得はできる。作戦では神谷の睡眠時間が取れるまで戦うはずだが。まだか⁉︎神谷)
トネイルはそう思っていると、灯城は二本の剣を構えて問いかけた。
「何か考え事をしているようだが。作戦でも練っているのか?」
「いや、今俺ができることを考えていただけだ」
トネイルはそう言うと、二本の拳銃を構え、灯城を睨みつけた。
(奴の剣技が優れているならば、奴の剣を壊すことができれば、奴は攻撃できないはずだ。ここで俺が、奴の剣を壊す‼︎)