51話 わずかな希望
「その全てを見通すような瞳……。そうか、お前もリミッター解除をできるのか」
灯城は自分の攻撃を防いだリケッドにそう呟いた。リケッドは灯城を睨みつけこう言った。
「仲間は俺が守る‼︎」
「ゴルシャと対等に戦えなかった者が、随分と勇ましくなったものだな。いいだろう、相手をしてやる」
「油断するなよ」
リケッドはそう言い、灯城へと走り出した。
灯城は大剣を二本の剣に分裂させ、戦闘態勢を取った。
シンのそばにデュージルは駆け寄ると、デュージルは俺の肩を持ち上げた。
「ここは危ない。救急班のとこに移動しよう」
そう言うと、シンとデュージルはその拠点の外のテントへと向かって戦場を去った。
その拠点にはリケッドと灯城しかいなかった。
救急班のテントには戦いで重傷を負った者が多数いた。ネヴァもその内の一人だ。今は寝ているが、先ほどセツヤに右肩を剣で貫かれていたのだ。
医療班の一人はデュージルに問いかけた。
「今戦場はどうなっている?」
「灯城とリケッドの一騎打ちだ。今回の敵は灯城だけか?他にもいただろう?」
「白龍兵が4人くらいだ。そいつらはすぐに倒したが、灯城が強くてな」
「仕方ない。奴は強すぎる」
デュージルはそう言い、シンへと目線を変えた。
「シン、松田隼人はどうした?」
「……」
「おいシン、寝てんのか?」
シンは寝てしまっていた。よほど疲れてたんだろう。と医療班の一人は言うと、デュージルは俺を叩き起こした。
「戦場の近くで寝るな!そんな暇あったら作戦でも考えろ!」
「……悪い、うとうとしてた」
「いや、寝てたぞ」
デュージルはそう言うと、シンは気づいた。
俺は寝てたんだと。
魔人化は魔神と融合するために、一回の融合に睡眠時間が必要になる。先ほどまでは松田隼人との戦いで魔人化してしまったが、今、寝ていたとなるともう一度魔人化できるかもしれない。
そのことに気づいたシンはデュージルに言った。
「上手くいくかわからないが、作戦を思いついた!」
「どんな作戦だ?」
「灯城とリケッドは二人とも、ゴルシャと同じようにリミッター解除の状態になっている。なら、二人ともリミッター解除のタイムリミットがあるはずだ。ゴルシャと戦ったとき、急にゴルシャのパンチのスピードが遅くなったり、反射速度が鈍ったりしていた。それはゴルシャのリミッター解除のタイムリミットが切れたからだ」
「つまり、灯城のタイムリミットが切れる時を待つということか」
「そうだ。奴がリミッター解除している間は、恐らく誰も倒せない。リミッター解除が切れたら、すぐに俺は魔人化し、奴を倒す」
「できるのか?さっきは魔人化できなかったのだろう?」
「魔人化に必要なのは睡眠時間だ。だから、この短い時間での睡眠で魔人化できるかはわからない。それと、リケッドがもしも先にリミッター解除が切れてしまったら、俺が相手をしなくてはならない。リケッドはリミッター解除をしたのはどうやら初めてらしいからな。その可能性はある」
「希望はほんの少しの確率ということか。なら、賭けるしかないな。その作戦を始めよう」
「了解!」
俺はそうデュージルに返答した。