44話 運命の鍵
黒虎連合に今、最大の危機が迫ってきていた。北側拠点には灯城が所属する白龍軍が襲撃し、黒虎連合本部にはセツヤが襲撃してきたのだ。
シンは北側拠点へ向かい、そして黒虎連合の最強の戦士、キシラ・ホワイトはセツヤを叩きに動き出すのだった。
セツヤはキシラを探すため、黒虎連合本部を手当り次第に探していた。
通路を走るセツヤを発見した黒虎兵はセツヤにヤリを構えて攻撃を仕掛けるも、セツヤの超重圧の前では傷一つつけることはできず、セツヤはまるですり抜けるかのように黒虎兵を避けて行った。
「す、すり抜けた⁉」
「ちがう!攻撃が当たってないんだ!」
「誰かあいつを止めろ!」
走って行くセツヤに指差し、抜かされた黒虎兵はそう言うと、セツヤの前に黒将の一人であるネルが立ちはだかった。
「行かせない!」
ネルは両手に小刀を構えセツヤに立ち向かったが、セツヤには紙一重で攻撃が当たらず、そのままセツヤはネルの隣を通り過ぎてしまった。
(バカな!近接攻撃が全く当たらないなんて!それに、目の前に立っただけなのに、足が動かなかった!)
ネルはそのまま足がすくんで動けなくなり、セツヤを追うことができなかった。
ネルは歯を食い縛り、走って行くセツヤを睨みつけていた。
(あっちはキシラの部屋……!まずい!このままでは……キシラが!)
一方、キシラがいる部屋ではキシラは窓の外を眺めていた。そこからの風景はとても美しく、空は曇っていた。
空を見つめるキシラはふと呟く。
「俺たちの故郷はいつも曇りだった。春が来ることが無い雪の国。全てを流し去る白き世界。感情を失う冷たい風。お前もその場所で生まれたはずだ。セツヤ」
キシラはそう振り向くと、その部屋にはセツヤが来ていた。
セツヤはキシラに問いかける。
「俺が風神一族だと言うことを知っているのか?」
「あぁ、知っている。ホワイトの血を持っていることもな」
「どうしてそれがわかった?」
「風神一族で髪が白いとなれば、君はホワイト国の血を持つと予想される。ホワイト族の髪は白く、フォナード族の髪は青いからな」
「そう言うお前も俺と同じ血を持っているそうだな。なら、“バーリル”のことも知っているのか?」
「……話を戻そう。君がこの本部に来た理由は大抵わかる。君が欲しいものはこの“運命の鍵”だろう。太古の昔に定められた運命を持つ者しかこの鍵は持つことができない。君がこの鍵を持つ運命なのだとしたら、俺はその運命を断ち切ってやる」
キシラはそう言いながら、セツヤに指輪を見せつけた。どうやらその指輪が運命の鍵らしい。
セツヤは魔覇の神剣を構えキシラに向けて走り出した。それに対してキシラは巻物を二つ取り出し、巻物を開いた。その巻物には二つとも魔法陣が記されていた。
(あの魔法陣は……⁉)
セツヤは迂闊に近づかまいとキシラから距離を取り、様子を伺った。
すると、キシラが持つ巻物から二体の黒い物が飛び出して来た。
セツヤはその黒い物を確認すると、再び戦闘態勢を取った。
(あれは悪魔武器なのか?見たこともない武器だ……)
その黒い物は黒い鎧を身につけた悪魔だった。顔は兜で隠れていて、背中から悪魔のような翼が生えている。
キシラは二体の悪魔を自身の前に配置し、こう言い放った。
「秘伝・悪魔武器、黒騎士」