43話 本部への侵攻
「敵は地下から現れた。恐らく黒い箱を使って悪魔界から来たのだろう」
「本当に来やがった!敵は4人と言っていたな」
「恐らく敵はパーティを組んで来ている。つまり4対4という訳だな」
デカムスはそう言い、腕に巻いていた包帯を解いていた。
キシラはパーティの司令塔として三人に指示を出す。
「敵は恐らく一人ずつ別れて行動するだろう。俺を一刻も早く見つけるためにな。お前たちもこれより別れて行動し、敵が一人でいるなら攻撃を開始しろ。二人以上ならば攻撃を止め、すぐに無線で俺に連絡するんだ」
「「「了解!」」」
そう返事を返し黒将のパーティはそれぞれ別れて行動しだした。
黒虎連合本部の建物にはパーティに所属していない兵も多数存在している。
このような緊急事態にその兵たちが出動をすることになっているのだ。
建物の1Fのロビーでは50人ほどの兵が、敵を待ち構えていた。
「相手は恐らく白龍軍だ。ここへ来た狙いは黒虎連合本部の制圧だと思われる!ここから上へは通すな!」
その兵を束ねる隊長のような男はそう言うと、その他の兵たちが槍や剣を掲げて勇ましい雄叫びを上げた。
兵たちは皆鉄製の鎧を装備していて、剣や槍など様々な武器を持つ物がいた。これらは全て悪魔武器でも天使武器でもない。人間が作り出した普通の武器である。
そんな時、ロビーで待機している兵たちの耳に微かだか足音が聞こえて来た。
カツ……カツ……カツ……。
それは階段を登ってくる足音だ。その足音は地下へと続く階段から確かに聞こえて来ていた。
銃を装備している兵たちは銃口をその階段へ向け待機した。足音は少しずつだか確実に大きくなっていた。
カツ……カツ……カツン。
地下への階段からキシラの予想通り、あのセツヤが現れた。セツヤが着用している服に縫われた白龍連合の紋章を見た隊長は銃を構えた兵に指示を出した。
「射撃班!撃てぇ‼」
その指示を聞いた20人もの銃を構えた兵士は一斉にセツヤへと銃弾を放った。
しかし20発もあったのにも関わらず、命中した弾は一つもなかった。全てセツヤに命中しなかったのだ。
「避けたのか⁉」
「いや!動いていなかったぞ!」
セツヤの超重圧の前に兵たちは混乱していた。隊長はセツヤにこう問いかけた。
「貴様の目的は何だ⁉本部の制圧か!」
「答えるとすればそうだな。“入場証”を受け取りに来た」
「なに訳のわからんことを!」
「キシラ・ホワイトがいる部屋はどこだ?僕は彼に用があるんだ」
「狙いはキシラ様か!貴様はここで片付ける!」
隊長はそう言うと、剣や槍を持った兵たちは一斉にセツヤに襲いかかった。
しかし、襲いかかった兵たちは次々と倒れ込んでしまった。倒れ込んだ兵たちの鎧には小さな穴が開いており、まるで銃弾で貫かれた用な跡をしていた。
「おい!どうした!……ぐはっ!」
「奴の後ろから銃弾が飛んで来て、鎧を貫きやがる!」
兵たちはそう言いながら次々と倒れて行った。ある一人の兵が言う通り、セツヤの背後の階段から拳銃を構えたショートカットの女性が現れた。
「敵はこれで全部?」
「いや、まだだ。キシラ・ホワイトは恐らく上だ。上への階段を探すぞ」
セツヤは女性の問いかけにそう答えると、もう一人、前髪で目が隠れるほどのロン毛の男が現れた。
「えー、まだ上登んの。足疲れたんだけど。ってか人間の鎧で天使の武器を防げるかっての。黒虎連合はバカばっかなんだな」
ロン毛の男は倒れている兵の身体を蹴り付けながらそう言うと、もう一人、屈強な肉体を持ったサングラスの男が現れた。
セツヤはその三人に指示を出す。
「ここから我々白渕は一人ずつ別れて行動する。キシラ・ホワイトを発見しだい、僕に無線で連絡するんだ。その他の敵は戦うなり逃げるなり、君らの判断に任せよう」
一方、俺と松田隼人の戦いの流れは俺の有利となっていた。
そんな戦いの状況のせいか、松田隼人はこんなことを言い出した。
「強くなったなボウズ。さすが天魔武器の堕天の魔石を持っているだけはある」
「アンタのお箱である悪魔の継承はどこにあるんだ?アンタが持っている訳ではないんだろ?」
「さぁな。白龍連合とやらにでも聞いてみるといい。俺はもう行く」
「逃がすかよ!」
俺はアザエルが変化した銃を松田隼人に向けたが、松田隼人はミニサイズの黒い箱を開け、消えてしまった。
黒い箱から放出される煙幕へ俺は何発か銃弾を放ったが、そこには松田隼人はいなかったのだ。
『逃げられたなシン。どうする、少し休憩して北側拠点に行くか?』
「いや、このまま行く。早く行かないと皆が灯城に殺られる!」
俺はすぐに馬に乗り、皆が先に行った北側拠点へと向かった。