40話 林での戦い
セツヤの捕獲に失敗した俺たち豪蓮に、突如、緊急出動命令が降りた。
黒虎連合の北側拠点にあの灯城とマラフが現れたとのことで、俺たちは援軍として出動した。
しかし、北側拠点へと移動しているとき、思わぬ事態になってしまった。
「松田隼人……‼」
移動中の俺たちの前に、松田隼人が現れたのだ。デュージルは松田隼人に問いかける。
「俺たちに何の用だ⁉貴方は俺たちの敵ではない‼」
デュージルがそう問いかけたとき、俺は「敵ではない」という言葉に反応し、問いかけた。
「敵ではないだと?」
「松田隼人は白龍連合にも黒虎連合にも属していない。独立パーティの司令塔だ」
「じゃあ、何で俺たちを狙う⁉」
俺がそう問いかけたとき、松田隼人が俺たちにこう言い放った。
「まぁ、来いよ。倒せないんなら、白龍連合は倒せないぜ」
松田隼人はそう言うと、俺はデュージルにこう言った。
「先に行っていてくれ」
「なに?」
「今でも北側拠点には奴らがいる。なら、俺は松田隼人を倒す。デュージルたちは先に行ってくれ」
「大丈夫なのか?」
「恐らく松田隼人はこの世界の何かを知っている。聞き出すさ、絶対に」
俺はそう言い、アザエルが変化した剣を構えて松田隼人に言い放った。
「勝負だ!松田隼人!」
「まぁ、お手並み拝見と行こうか」
松田隼人はそう言い、悪魔武器である死神の黒剣を構えた。
そんな松田隼人に向かって俺はアザエルが変化した拳銃を構え、松田隼人に向け発砲した。
しかし、松田隼人は林の木を盾代わりにし、銃弾を回避した。
その林は一本一本の木々がかなりの高さと太さを持っていた。瞬時に切り倒すことは困難だろう。
そう俺は思ったとき、辺りの落ち葉が浮き始めた。松田隼人の悪魔の邪眼の重力変化で、落ち葉を浮かせたのだ。
宙に浮いているたくさんの落ち葉は一斉に俺に向かって急降下してきた。
落ち葉は痛くはないが、視界の邪魔になり、俺の動きを鈍くさせた。
俺は微かに映った視界を確認した。すると俺の目の前で松田隼人が死神の黒剣で斬りかかろうとしていた。
「しまっ……!」
身動きが取れない俺は咄嗟にその言葉が思わず口から漏れてしまった。
松田隼人は俺の腹を斬りつけるように剣を振った。身動きが取れず、防御もできない。もう終わりだ。
だけど、死にたくない。
そう思ったその時、俺は時空がスローに感じた。
何もかもが遅く感じたのだ。落ち葉も当たってこない。松田隼人も斬りつけようとしない。
俺はスローテンポのような世界でアザエルが変化した拳銃で松田隼人の持っていた死神の黒剣を弾き飛ばし、松田隼人の額にもう一方の拳銃を突き付けた。
「……ッ‼」
松田隼人にはそれが一瞬のように感じたのか、少し驚いた表情をこちらに見せて来た。
俺はそのとき、何もかもがスローテンポに感じる自分に何が起こったのかわからなかったが、松田隼人が放った言葉でそれはわかった。
「お前、この一瞬で魔人化したのか」
俺は自分でも気づかない内に魔人化に突入していた。