30話 ゴルシャのスイッチ
雰囲気がさっきまでと変わったゴルシャを見て、同じ剛迅のパーティの隊長が心の奥で恐怖を抱いていた。
(まさかゴルシャ、スイッチを切ったのか……?)
動揺しているゴルシャの仲間を見て、デュージルを違和感を感じていた。
そんなゴルシャはリケッドにこう言った。
「さぁ、闘ろうぜ」
リケッドは身を構え、ゴルシャに向け走り出した。
すると、ふと気がつくとゴルシャのパンチが顔の目の前に迫っていることにリケッドは気づいた。
(は?)
リケッドがそう思ったときには、もうリケッドは殴り飛ばされていた。
決して油断していたわけではない。
あまりに速過ぎるゴルシャの姿が見えなかったのだ。
見えないほど速い攻撃なら、その攻撃をいなすこともできない。
そんなピンチに陥ったリケッドにゴルシャは話しかけた。
「どうしたよ?もう終わりか?」
(攻撃が見えない。それにスピードも瞬間的だ。このままだと、ヤバイ)
リケッドはそう思っていた。
ゴルシャの姿を見た剛迅の隊長は、デュージルと央馬の隊長に話しかけた。
「あれがゴルシャの本気だ。心の奥底でロックしていたリミッターを解除することにより、ゴルシャの戦闘力は一段階上昇する。リミッターを解除するにはある条件を満たさなければならないがな」
「条件?」
「自分と同等に戦える戦士がいることだ。奴はかつてボクシングでアメリカでは最強と謳われていた。だが、奴はある大会の決勝で辞退した。その理由がわかるか?」
そう剛迅の隊長は問いかけたが、デュージルも央馬の隊長も答えなかった。
剛迅の隊長は話を続ける。
「人間では、自分と同等に戦える奴はいないからだ。最強となった奴はより強い者を求め、悪魔へとその矛先を向けた。奴が白龍連合に所属しているのもそういう理由だ」
そのとき、央馬の隊長はリケッドの心理がわかった気がした。
リケッドはゴルシャを倒すために強くなったのではない。
リケッドはゴルシャに認めてもらうため、ゴルシャと同等レベルで戦うために、強くなることを望んでいたのではないか。と。
央馬の隊長はリケッドとゴルシャの戦闘に目を向けた。
そこにはリケッドがゴルシャに向け走り出していた。
(ゴルシャのスピードは尋常じゃない!見えないほど速いのなら空気の流れでゴルシャの動きを捉えるしかない!)
リケッドはそう考えながらゴルシャに向かって走って行った。ゴルシャもそれに迎え撃つように走り出す態勢を取った。
「おいおい、まさか、そんな小賢しい手で俺の動きを読めるとか思うなよ」
ゴルシャはそう言うと、一瞬にして俺の背後に移動してきていた。
リケッドはゴルシャの動きを読むどころか、空気の流れでさえつかめなかった。
(嘘だろ⁉今のゴルシャは……風よりも速い!!)
リケッドがそう思った時には、リケッドは背後からゴルシャに殴り飛ばされていた。
ゴルシャはそんなリケッドにこう言った。
「もうこの戦いも終わりだ。お前の命もな」
リケッドが起き上がった時には、目の前にゴルシャが攻撃を仕掛けていた。トドメを刺すつもりなのだろう。
リケッドはトドメを前に動けなくなってしまった。
もう終わりだと思ったそのとき、ゴルシャは攻撃をやめ、その場から離れた。
俺がトドメを刺そうとするゴルシャに向け拳銃を構えていたからだ。
「ちっ、邪魔しやがって。この死に損ないが」
ゴルシャは俺にそう言うと、俺は身体に蒼いオーラを放つ魔神を宿した。
「俺は死なねぇ。友を助けるまで!」