27話 シンVSゴルシャ
北側拠点を奪還するため、黒虎連合は俺たち豪蓮と糸那を主体とした奪還作戦を開始した。
北側拠点の周りには拠点を囲む鉄の壁があり、侵入するのは困難かと思われたが、まだ未完成でもある俺の新技によって壁を破壊し、豪蓮と糸那は馬ごと拠点へと侵入することに成功。
そんな俺たちにゴルシャが所属する剛迅が襲いかかる。
「あの壁を壊した奴は俺がやる」
ゴルシャはそうパサーに言い残し、俺へと向かって来た。
俺は他の仲間たちから離れた場所に移動した。
「頼んだぞ神谷!」
「おう」
デュージルから応援をもらった俺はそう言いながら、目の前にいるゴルシャに目を向ける。
「お前がゴルシャだな?」
「そうだ。まぁ、こいよ」
ゴルシャはそう言うと、俺はアザエルが変化した銃を両手に構え、ゴルシャに向け発砲した。
ゴルシャは俺が放つ銃弾を除けながら、俺の目の前に移動して来ていた。
そして俺が持っていた銃弾を、拳で弾き飛ばすと、武器を何も持たない俺にアッパーを放って来た。
「ぐっ……‼」
俺は態勢を立て直し、ゴルシャの様子を伺った。こちらに攻撃を仕掛けてくる様子ではない。
隙無対策どころか、タダでさえ強い。
こんな奴に勝てるのかと心底思ってしまったが、勝てなければ死ぬ。そう考えただけで俺の身体は戦いへと動いた。
「まだだ!」
俺はアザエルが変化した剣を構え、ゴルシャへと走り出した。
ゴルシャも俺に向け走り出し、俺と正面からぶつかり合おうとしていた。
俺は剣を構え、ゴルシャは拳をいつでも放つ姿勢になっている。
俺とゴルシャが衝突する瞬間、ゴルシャの姿が疾風のごとく消えた。
するとゴルシャは俺の背後に移動していたことがわかった。
「後ろに!」
「気づくの遅ぇよ」
完全に後ろを取られた俺はゴルシャの攻撃を避けようと思ったが、俺が動くよりも先にゴルシャのパンチが俺に直撃しようとしていた。
しかし、ゴルシャのパンチは止まった。
俺は後ろを振り向くと、ゴルシャのパンチを放った腕に鎖状のムチのようなものが巻きついていた。
そのムチは糸那の女戦士のものだった。
糸那の女戦士はゴルシャの腕に鎖状のムチを巻きつけ、ゴルシャのパンチを止めたのだ。
ゴルシャの動きが止まった一瞬を俺は見逃さなかった。
その一瞬で俺は剣を握り、背後にいるゴルシャに向かって斬りつけようとした。
しかし、ゴルシャはその攻撃を飛んで避け、ムチが巻きついている腕を力強く引き、糸那の女戦士を引き寄せた。
どうやら引き寄せた直後にパンチを放つ気だろう。
それに気づいた俺は剣を銃の姿に変化させ、ゴルシャに向かって銃弾を放った。
空中に飛んでいれば銃弾を避けることはできない。
そう確信した俺だったが、ゴルシャは腕に巻きついている鎖状のムチを盾代わりにし、銃弾を弾いた。
糸那の女戦士はゴルシャの腕に巻きついてある鎖状のムチを開放し、俺の隣に立った。
その女戦士にゴルシャは呟いた。
「お前か、鎖状のムチを操る女戦士ってのは」
「あら、有名なのね。アタシの名はクラネよ!覚えときなさい!」
この女戦士は戦士というだけあって気が強そうだな。と俺は心底思った。
そんな俺に糸那の女戦士が話しかける。
「アタシは普段サポーターをやっているから攻撃のサポートは任せて!こう見えて“閃光”と“射撃の虎”に並ぶ実力なんだから!」
「わかった。あいつの動きを一瞬でもいい。止めてくれ」
俺はそう言い左手に雷の魔力を集中させ、クラネは鎖状のムチを構え、ゴルシャへと向け走り出した。
「来い」
ゴルシャは二人でかかってもなお、にやけながらそう言った。