26話 北側領土奪還作戦
北側領土の奪還作戦まで残り二日。
俺たち豪蓮はゴルシャの隙無の対処法を知り、北側領土奪還へと向けてトレーニングをしていた。
トレーニング中、堕天の結晶に封印された悪魔、アザエルが俺に話しかけて来た。
『なぁシン。お前に新技を教えてやろうかと迷っているんだが、どうだ?』
「新技?どんなやつだ?」
俺はそう聞くと、幻のアザエルは身体で表現しながら答えた。
『説明するとだな。バリバリギューン、ドカーンって感じだ』
「いや、わかんねぇよ」
『まぁ、もっと簡単に説明するとだな。お前の雷の魔術は今まで光線として放つことしかしなかった。新技は、その雷の魔術を最大限に発動し、片手に圧縮するんだ。パンチの速さと威力を向上させる』
「二日間で物にできる技なのか?」
『お前の技量にかかっている』
「いいだろう。教えてくれ」
一方、央馬のアジトでも、リケッドが新しい戦闘スタイルを熟知しようとしていた。
リケッドと央馬の隊長が組手を行っていたのだ。
ゴルシャに教わったものでもなく、自分で生み出したその戦闘スタイルは、ほぼ完成していた。
(もっと重心を軽く……。それでいて速く……)
リケッドはぶつぶつ言いながら、隊長と組手をしていた。
黒虎連合の各々が北側領土奪還作戦へと向け力を高めて行った。
そして、その日は訪れる。
北側領土奪還作戦当日。
俺たち豪蓮は北側領土へと向け、馬に乗り込み、走り出した。
奪還地点に敵はゴルシャ所属する剛迅のみと報告を受けている。
こちらは俺たち豪蓮と糸那という二組のパーティだ。援護部隊にリケッドが所属する央馬も含まれている。
北側領土を目指して走っている途中、糸那と合流することができた。
豪蓮は糸那とともに北側拠点を目指した。
やがて北側拠点が見えてきた。
北側拠点は報告通り、拠点の周りが鉄の壁で覆われていて、簡単に拠点へは侵入できない。
しかし、その壁を突破する秘策が俺たちにはあった。
俺は作戦通り馬から降り、他の仲間たちはそのまま馬で北側拠点を目指した。
北側拠点では、ゴルシャが所属する剛迅が拠点からこちらの様子を伺っていた。
ゴルシャはその様子を見た後、その場に寝転がり言った。
「奴らがこの拠点に侵入するまで、俺はここで寝てるわ。こっちには壁もあるし、遠距離攻撃のサポーターもいるしな」
「まぁいい。奴らがこの拠点へ侵入して来た時は戦え」
パーティの司令塔であるパサーはゴルシャにそう指示を出した。
一方、一人馬から降りた俺は左手に雷の魔力を集中させた。
他の仲間たちはそのまま馬で拠点へと猛スピードで走っている。
(頼むぞ、神谷)
デュージルは心の底でそう思った。
すると、俺の左手が蒼白い雷を纏った。俺は帯電している左手を背後に向け、放電した。
すると、まるで落雷のような速さで仲間たちの馬を通り過ぎ、北側拠点の壁を破壊した。
「かかれェェェ‼‼‼」
壁を破壊した様子を見たデュージルはそう言い、デュージルたちは馬を前進させ馬ごと拠点へと侵入した。
その様子を見たゴルシャは、ニヤつきながらこう言った。
「やんじゃねぇか。面白い」