25話 お前が勝つなら
両腕が動かなくなり、立つこともままならない俺にゴルシャはこう言った。
「お前の負けだ」
俺は抵抗しようとした。だが、起き上がることもできない。
その姿を見た隊長たちが俺の下に駆け寄った。
「撤退するぞリケッド!」
「まだ戦える!ここで俺たちが引いたら、敵は進行してしまう!」
「お前が死んでも敵は進行するんだ!命令にしたがえ!」
央馬の隊長はリケッドを背負い、そこから去ろうとした。が、央馬の前にゴルシャが立ちふさがる。
「簡単に逃がすかよ」
ゴルシャはニヤつきながらそう言った。
央馬の戦士たちは逃げ出す術を必死に考えている途中、剛迅のパサーがゴルシャのそばに駆け寄った。
「彼らは逃がしましょう。白龍連合の最優先目的は領土の略奪。彼らはここで死のうが生きようが、どちらにせよいつかは死ぬのです」
「……まぁいいだろ。リケッドも俺を倒すなんざほざくことは無いと思うしな」
ゴルシャはそう言うと、ゴルシャと剛迅のパサーは央馬に背を向け、他の剛迅のメンバーの下に歩いて行った。
背を向けた剛迅に央馬の隊長は銃を構えたが、剛迅のパサーは背後を振り向かずに告げた。
「戦う気なら容赦しませんよ」
すると隊長は銃を下ろし、俺たち央馬はその場から去りました。
「ーーそして、俺は目が覚めるといつものアジトで寝ていた。そしてある報告を受けた。それは北側拠点が占領された。というものだった」
リケッドは全てを説明すると、デュージルは深く考えた後にこう言った。
「ゴルシャに灯城。白龍連合の最強と言われた戦士がこうも前線に置かれるだろうか」
「灯城正凪のことは聞きました。貴方たちが無事で良かった」
「あぁ、歯も立たなかったがな。俺はこうも前線に最強と言われる戦士が置かれるのは、まだ白龍連合には秘訣があるという風に考えている」
デュージルはそう言うと、俺はデュージルに話しかけた。
「とりあえず、今はゴルシャの隙無の対策を練ろう。奴を倒さない限り、黒虎連合の壊滅は目に見えてくる」
「そうだな。報告ありがとう、リケッド」
デュージルはそう言うと、俺たち豪蓮は央馬のアジトから去って行った。
その後、リケッドはアジトの裏で一人で落ち込んでいた。
今までのことがゴルシャに敗北したことで、無駄だったように感じたのだ。
そんなリケッドに央馬の隊長が缶コーヒーを渡して話しかける。
「どうした?」
「……いや別に、なんでもないッス」
「ゴルシャのことだろ。隠しているつもりだろうがバレバレだ」
「俺は……弱過ぎる。ゴルシャに堂々と倒すと言いながら、隊長がいなければ今頃死んでいた……」
「弱いなら強くなればいい。それでも足りないならもっとな」
「戦ってから、いくら強くなってもゴルシャには勝てないんじゃないか。ってすごく思うんス」
「お前が勝てないと思ったら、誰がお前を勝たせるんだ」
隊長は少し強めの口調で言った。
「お前が勝つんなら、お前が戦わなくちゃいけないんだ!お前がゴルシャを助けたいんなら、お前が助けなきゃいけないんだ!」
心を見透かされたような感覚に陥ったリケッドは、缶コーヒーを額に当て、涙を流した。
「お前ならできる。なぜなら今のお前は弱い。まだまだ強くなれる。もっと強くなれる。お前ならゴルシャを超えられる」
「は…い……!」
リケッドは泣きながら返事を返した。
隊長はこう言った。
「北側拠点奪還作戦が行われるのは二週間後。お前の両腕の回復とゴルシャの隙無対策が完成すればその作戦を参加する。できるか?」
隊長はそうリケッドに問いかけると、リケッドは涙を服の袖で拭いて答えた。
「やります!絶対に!」