20話 また会おう
魔鳥の眼球を用いてどんなに敵を狙おうとしても、瞬間的に反応して攻撃を避けるマラフ。
トネイルに勝ち目は無いと思われたが、トネイルは直接拳銃でマラフの頬を殴りつけ、それと同時に銃弾を頬に撃ち込んだ。
「攻撃が当たった!」
赫花に所属する刀を持っている男はそう言うと、トネイルは他の二人を見て言う。
「あと二人だな」
しかし、その二人は仲間が死んだと言うのにまるで何もなかったかのような顔をしていた。
並の戦士なら動揺はするだろう。しかも同じパーティで今までずっと共に戦って来たのなら尚更だ。
しかし、この二人は全く動じなかった。
そのとき、トネイルは気づいた。
マラフは死んでなどいなかった。
マラフは頬を撃ち抜かれたというのに、まるで何事もなかったかのように起き上がったのだ。
「少々、痛いですね」
「生きていたとはな」
「人間の武器で私は倒せませんよ」
「お前は……人間じゃないな」
トネイルはそう聞くと、マラフは答える。
「人間である僕の身体に悪魔の身体の一部を少し加えただけです」
マラフはそう答えるとシャツのボタンを開け、胸を見せた。
すると左胸が心臓のような形で盛り上がっており、ドクンドクン激しく振動しているのが目で見てわかった。
「悪魔の身体の一部とはいえ、悪魔の細胞が私の細胞を取り込もうとしましてね、身体の8割は悪魔化しているんですよ」
「人間の武器では倒せないのも、お前の身体は悪魔の身体だからか」
「その通りです。今の私はあの松田隼人の悪魔化とほぼ同じ状態。あなたには、負けませんよ」
すると、赫花の刀を持った男がトネイルに言った。
「トネイルさん!黒虎連合の援軍が来ました!」
するとマラフは舌打ちをした後、他の二人に命令する。
「撤退だ。これ以上は危険と判断する」
「逃がさん‼」
トネイルは銃を構え、マラフ背後にいる二人に向け銃弾を放った。
しかし、マラフは悪魔のような翼を広げ、トネイルが放った銃弾を弾き返した。
「何て硬い翼だ!トネイルさんの銃弾を弾くなんて!」
「さて行きましょうか」
マラフはそう言うと、他の二人を両手でつかみ、そのまま羽ばたいて行った。
灯城もマラフが撤退している姿を見て、俺にこう告げた。
「また今度、会おう」
灯城はそう言うと、白い箱を使い、輝かしい光と共に消え去った。
白い箱とは天空界へと通じる箱。悪魔界に繋がっている黒い箱と対象的な物だ。
ひとまず、俺たち豪蓮と赫花は敵の奇襲から東側領土を守ることに成功した。
この後、駆けつけた援軍が拠点の守備につき、俺たちは休息を取ることとなった。
後日談だが、デュージルが言うには、灯城正凪を相手に全員が無事だったのが信じられない。というらしい。
これから白龍連合と戦うとなるのならば、灯城以外にも強敵と戦う時は来るだろう。そう思っていた。
そんな俺たちパーティの下にある情報が渡った。
それは黒虎連合の閃光と言われているリケッドが所属しているパーティ、央馬が守護していた北側拠点が突破された。という情報だった。