18話 灯城正凪
「走っている馬を鎧の唯一の弱点をついて撃ち倒した!」
「あれが、“射撃の虎”‼」
トネイルの姿を見て、俺たちのパーティである豪蓮は驚きの反応を見せていると、パサーであるデュージルは俺たちに注意した。
「油断するな!敵の一人がこの拠点に向かって走って来ている!赫花が他の三人の敵を相手にしている以上、あの一人は俺たちが対処する!戦闘態勢をとれ‼」
「了解‼」
デュージルの指示を聞き、俺は勇ましく答えた。
豪蓮が待機している拠点に向けて走ってくる男は、まるでその男と同じくらいの大きさの大剣を手に持っていた。
(あの大剣……それにあの紫のコート……まさか……)
デュージルは嫌な予感を感じていた。
一方、倒れた三頭の馬から離れ、戦闘態勢をとった三人の敵の前に、トネイルと赫花の戦士が立ちふさがる。
「お前らの相手は俺だ。逃した一人は奴ら豪蓮の4人で何とかなりそうだしな」
トネイルはそう言うと、三人の敵の内の一人がこう呟いた。
「4人だけじゃ、足りませんよ……」
一方、大剣を構えた男はその大剣で拠点の壁を破壊し、もう俺たちの目の前に来ていた。
するとネヴァが刀を持って迎え撃った。
「大剣なら動きは鈍い‼素早さなら俺が‼」
ネヴァは大剣を持った男に向かって斬りかかった。
しかし、男は大剣を半分に分割し、二本の剣にすると、ネヴァの刀を防ぎ、ネヴァの右膝を斬りつけた。
「ぐあ‼」
ネヴァはその場から離れようとしたが、右膝を斬りつけられたせいか、右脚が動かなくなってしまった。
「散れ」
「させるかッ‼」
倒れ込み動きがとれないネヴァに向けてトドメを刺しかかる男に向け、俺はアザエルが変化した銃から銃弾を男に向け放った。
男は攻撃を止め、銃弾を跳んで回避した。
デュージルはその男を見て、俺たちに言う。
「こいつは間違いない‼目撃したら逃げろと言われている白龍連合の最強の剣士……!灯城 正凪‼」
「シンと同じ日本人!」
「だが、とても同じ人種とは思えない殺気。アタシでもこいつと闘るとなると、正直ビビるよ」
ネヴァとトルシャはそう言うと、灯城は俺たちを一人ずつ睨みながら言った。
「来るなら全員で来い。でなければ話にならん」
「言われなくてもそのつもりさ‼」
俺はそう言い放ち、アザエルが変化したカッターブーメランを灯城に向け投げ飛ばした。
灯城はブーメランを跳んで回避すると、俺はブーメランを掴み拳銃に変化させ、空中に跳んだ灯城に向け銃弾を放った。
「空中に跳んじまったら、避けらんねぇだろ‼」
俺はそう言い、銃弾を空中にいる灯城に向け何発か撃った。
しかし、灯城は二本の剣を合わせ、再び大剣に変化させると、大剣を縦に構えこう言う。
「あぁ、避けはしない」
すると灯城は大剣の持ち手の部分をバイクのハンドルのようにひねると、大剣そのものが一回り大きくなり、灯城の身体よりも大きくなった。
その大きくなった大剣を盾にし、銃弾を防ぎ、地面に着地すると灯城は持ち手を両手で持ちながら、その場で剣を振りかかった。
灯城から俺たちの距離まで10mあり、大きくなった大剣とはいえ、俺たちまで攻撃は届かない距離だった。
しかしデュージルは両手で大剣を持っている灯城の姿を見て言い放った。
「伏せろッ‼‼」
俺たちはデュージルの合図に従い、その場で態勢を地面に伏せた。
その瞬間、頭上で何かが物凄い速さと勢いで動いていたのがわかった。
デュージルは起き上がり、俺たちに言う。
「よく聞け!奴の大剣は大天使の変化剣という天使武器だ!あの剣は持ち手をひねると大きさを変化できる!その剣を使って奴は、とある森の木を全て斬り倒したらしい!」
「も、森を⁉」
「よってあの剣を持った奴の攻撃範囲は、奴を中心とした半径1キロ以内だ‼」
デュージルはそう言うと、ネヴァは後ろを振り向いた。
ネヴァの背後にあった建物の壁は何か巨大な刃物で削られた跡が残っていた。
12mほどの大剣を肩にかけた灯城が答えた。
「よく知っているな。キャプテン・デュージル。このパーティの攻撃力はなかなかだが……。防御はどうだろうか」
すると灯城は大剣を元の大きさに戻し、さらに剣を二本に分裂させた。
そして俺に向かって走って来た。
俺はアザエルが変化した剣を構え、灯城に迎え撃った。
俺と灯城は剣を交えると灯城の表情が豹変した。隙をついた俺は灯城に斬りかかったが、灯城は紙一重で俺の攻撃を避けた。
俺から距離をとると、灯城は言う。
「そうか、剣の刃に雷属性の魔力を……」
「この手でも隙をつくれないとはな。強ぇ……」
両者、睨み合った。