130話 同じ血を持つ者
セツヤは俺の大切な友達だった。
ある日、セツヤは学校の帰り道でこんなことを言い出した。
「ごめんなシン。俺のせいでお前まで軽蔑されて」
「気にすんなって!お前の代わりはいないだろ!」
俺はそう答えると、セツヤは俺にこう言って来た。
「シンが困ったら俺、絶対シンを助けるさ」
「それは俺も同じさ」
俺はそう返事を返した。
遠い遠い記憶だった。
まだ幼かった頃の遠い記憶。とても遠い記憶だが、とても濃くその記憶は残っていた。
俺はセツヤと対面すると、無意識にそんな記憶を思い出すようになっていた。
「セツヤ、久しぶりだな」
「……」
「まだ俺たちが小さい頃は俺の方が身長大きかったのに、今じゃお前の方が上かもな」
「……」
「それにしても俺たちが兄弟だなんてビックリだよな。お前は俺と違って勉強ができて、スポーツは俺の方が得意だったけど、イケメンでモテモテでさ、バレンタインの日とかやばかったもんな。兄弟だったなんてとても思わなかったよ、ハハハ……」
「……僕はシンと別れたあの日、自分がホワイト国で育ったことを知った。そしてガルドが持っていた失った記憶を取り戻す薬を服用し、僕は生まれてからの記憶をその日、取り戻した。記憶を取り戻しまず最初に浮かび上がるのは、僕を引き離すことによって泣き崩れる母の姿だった。泣いていた。母は泣きながらも慈悲を求めていた。僕と生き別れになることを拒んでいた。そこで最強の魔術師の血を引く者の決断は、僕の母の存在を消し去ったんだ!僕の母は殺されたんだ!やがて僕は存在してはならない最強の魔術師の血を引く者とされ、ある者たちは俺を殺そうと企てた!だが、僕は真実を知らぬまま生かされたんだ!同じ血を持っているとはいえ、お前と僕では世界が違うんだよ。お前を光とするならば僕は闇だ。この呪われた血は決して、二人存在してはならない。後から生まれた僕は殺される。神話の英雄などとヒーロー気取りしている最強の魔術師も所詮、自らの保身のためならば子でも孫でも消し去る男だ」
「レンはそんなことしない!自分より仲間を想っていた男だ!俺たちの父さんだって、その意思を受け継いでいるはずだ!そして俺たちも!それに母は違えど共通しているものは持っているはずだ!お前は闇なんかじゃねえ!……俺は父さんがお前の母さんを殺したとは思えない!」
「お前は勘違いしているシン。最強の魔術師は正義ではない!悪の血筋だ!僕はこの目で見たんだ!母が目の前で殺される記憶をな!!僕は自らの血を憎み、父を憎み、世界を憎んだ!この憎しみの世界を今日、僕が変えてやる!そのためには愚行なる血を絶やさなければならない!その呪われた血筋もろとも消し去ってやる……シン!!」
セツヤはそう言い放つとシンへと振り向き、あらかじめ拳を握りしめて用意していた風圧弾をシンへと放った。
しかしその風圧弾はシンには直撃せず、シンを覆う魔神によってガードされた。
「セツヤ、俺はお前とは戦いたくない!」
「ならそう言いながら散れ!偽善者を貫き通すならな!」
セツヤは魔覇の神剣を取り出し、シンへと向けて走り出した。迫ってくるセツヤを目の前にして、シンは想いをつぶやく。
(俺はお前とは戦いたくない。だが、お前を倒さなければ……この世界を救えないなら……俺は……)
するとシンは両腕の肌ギリギリに魔神のオーラを宿し、雷の魔力を帯電させた。
そしてセツヤの剣と雷の魔力を宿した右手が火花を散らし交わし合った。
(兄弟であろうと、お前を倒す!!)
その頃、シドウと戦闘中の松田隼人は究極悪魔化に変態していた。究極悪魔化している松田隼人を見てシドウは言う。
「またそれか。前と同じでは俺は倒せんぞ」
「外見は同じかもな」
松田隼人はシドウへ距離を詰め拳を振るった。しかし、シドウは松田隼人の拳を左手で受け流し、右手で強烈なパンチを放った。これが狙いだった。松田隼人はシドウのパンチを受け流されていない片手で受け止め、シドウのパンチを放った態勢を利用して、シドウを放り投げた。
(あの態勢から拳を受け止めるとは!)
その時、投げ飛ばされているシドウの身に異変が起きた。
身体がその場に止まったまま宙に浮いているのだ。
「これは、まさか!!」
「そのまさかだ」
松田隼人はシドウの身体を悪魔の邪眼の能力で浮かせると、拳を放つ態勢で自らへと引き寄せた。
(重力変化で引き寄せられる!手も足も動けないからカウンターもできん!やられる!)
松田隼人はシドウを引き寄せ、強烈な拳を放った。
「もういい。お前は下がっていろ、シドウ」
松田隼人の放った拳は黄金のパネルで構築された黄金の壁によってシドウへの攻撃を防がれていた。
松田隼人は黄金の壁から距離を取り言う。
「やっと登場かよ、ジラ・バーバリタス」
「申し訳ありません、ジラ・バーバリタス様」
重力変化が解けたシドウはその場で起き上がると、ジラ・バーバリタスは背中に構築した黄金の翼で宙に浮いた。
その翼も黄金のパネルで構築されていた。
「色々と便利そうだな、その神の武器とやらは」
松田隼人はそうジラ・バーバリタスに呟くと、ジラ・バーバリタスは松田隼人を見下して言った。
「お前のような悪魔に取り憑かれた人間は、この神が直々に制裁を与えよう」
ついにジラ・バーバリタスが松田隼人へと刃を向けた。




