129話 実力の差
セツヤが儀式を始めようとしていた時、セツヤがいるその聖堂にシンたちは辿り着いた。
「ここか!」
シンたちが聖堂にたどり着くと、入り口の前に白渕パーティのフタイ、キビル、ミズナが立ち塞がった。
「おぉっと、ここから先は行かせないよん!神谷シン以外はな」
「お前らは白渕の!神谷シン以外とはどういう意味だ!」
キビルの言葉に問いかけたトネイルは素早く銃を構えた。
「セツヤの命令さ、神谷シンは通せってな」
キビルは答えるとシンは歩き出した。
「その先にセツヤがいるんだな?」
「その通り。ここを通っていいのは神谷シンだけだ、それ以外はそこから前に一歩でも進めば侵入とみなしてお前らを殺す」
キビルはそう宣言するとシンは他のメンバーに指示を出した。
「戦闘は控えてくれ。俺はセツヤと戦いをしに来たんじゃない、話をしに来たんだ」
シンはキビルとミズナの横を通り過ぎ、聖堂の中へと入って行った。
一方、ジラ・バーバリタスは高層ビルの屋上でシドウとともに先ほど放った三体の騎士たちが情報を掴むのを待っていた。
「神の秘宝を手に入れる可能性が一番高いのはセツヤであろう。セツヤは神の秘宝を求めてここに来たのに対し、他の奴は神の秘宝を守るためにここに来たようなものだからな。松田隼人や神谷シンの行動を想定するとなると、今頃私を探し回っているはずだ」
ジラ・バーバリタスは独り言を呟き始めると、背中に黄金のパネルで生み出した翼を装着した。
「予想よりも早かったな、悪魔界の英雄」
ジラ・バーバリタスとシドウの前には松田隼人が到着していた。
「見つけたぜジラ・バーバリタス。白騎士のシドウまでいるとはな」
「ジラ様、ここは私におまかせ下さい」
シドウは現れた松田隼人の前に立ち塞がるとジラ・バーバリタスは指示を出した。
「ではシドウ、旧時代の英雄を消してしまいなさい」
「了解しました」
シドウは松田隼人の前に立ちはだかると松田隼人は悪魔の継承で悪魔化した。
「旧時代の英雄とは言ってくれるなジイさん、確かにその通りだな。俺は旧時代、だから今日新しい英雄が誕生するのさ。俺はそいつを英雄に導くために、足跡を残すために、てめーらを倒す!」
松田隼人はそう言うと、邪神の弓矢を構え、シドウに向けて三発の矢を放った。シドウはその矢をしゃがんで避けると矢は進行方向を変え、Uターンしてシドウを背後から襲いかかった。
(軌道を変える矢……いや、悪魔の邪眼による重力変化か)
シドウはそう考えながら背後から来る矢を拳を振るい弾き飛ばした。
「前とは違って頭は冷めたようだな。そう来なくては、俺は一番冴えてるお前と戦いたいのだからな」
シドウはそう言い、気がつけば松田隼人の目の前まで移動してきていた。
「なっ!?」
松田隼人は咄嗟にガードをし、シドウは松田隼人のガードを蹴りで崩し、拳を松田隼人の頬に直撃させ殴り飛ばした。
殴り飛ばされた松田隼人はビルの屋上の隅まで飛ばされていた。もう少しで落ちてしまうところだ。
(気がつけばシドウは俺の目の前に移動していた!動きに無駄がない!急スピードから急停止、急停止から急スピードへの移行が速すぎる!動きが読めねぇ!)
松田隼人は起き上がってシドウとは離れた場所から戦闘態勢をとった。
(シドウを相手に単純に攻撃するだけじゃ倒せねぇ!奴の攻撃を確実に避けてデカイ攻撃をくらわす必要がある!ある程度距離をとれば動きを限定できるはずだ!そこを狙う!)
松田隼人は頭の中で作戦を練っていると、シドウはボクサーのような姿勢を取り、松田隼人へと接近した。
シドウは全速力で松田隼人への距離を縮めていった。正面から迫ってくるシドウを見て松田隼人は警戒を強めた。
(このまま正面から来るのか!?それとも周り込むのか!?)
松田隼人は一切瞬きをせず、シドウの動きを見つめた。シドウは周り込むような素振りを見せずそのまま接近してきた。あと一歩で松田隼人のパンチが届く距離まで来ていた。
(正面!!)
松田隼人は正面から接近してきたシドウに向けてカウンターを仕掛けた。シドウは止まることなく松田隼人の目の前から攻撃を仕掛けていた。
しかし、松田隼人のカウンターがシドウに直撃することはなかった。
松田隼人のパンチはシドウに届かない距離だったのだ。パンチが届く距離まで接近していたシドウの姿は松田隼人が迫り来るシドウを見てイメージした幻であり、実際シドウは松田隼人のパンチが届かない場所で急停止していた。
(あの全速力から急停止だと!?どんな足腰してやがる!?)
誰もいない場所にカウンターを仕掛けた松田隼人の態勢は隙だらけであり、シドウは急停止から急発進し、松田隼人のみぞに強烈なパンチを打ち込んだ。
「グフッ!!」
みぞに拳を打ち込まれた松田隼人は吐血し、その場に跪いてしまった。跪いている松田隼人をシドウは見下す。
「世界を成すのはジラ・バーバリタス様だ。貴様は世界のためにもこの世のためにも何の役にも立たん。この実力の差を思い知れ、痛感しろ」
シドウは跪いている松田隼人の顔面に蹴りを打ち込み、松田隼人をビルの上から蹴り飛ばした。
みぞを殴られ蹴り飛ばされた松田隼人は意識を朦朧としながら、ビルとビルの隙間に落ちていった。
「ジラ様、少々お待ちください。トドメを刺しに参ります」
シドウは松田隼人を追撃しようとそこから飛び降りようとした時、ビルとビルの隙間から強烈な雷撃が空に打ち上がった。
「!?」
すると重力変化で松田隼人が宙に浮いた状態で再びシドウの前に現れた。
松田隼人は究極悪魔化と化していた。頭には帯電した角が生えており、荒々しい覇気が松田隼人を覆っていた。
「若い奴らが今を守るために、未来を守るために戦ってんだ。大人の俺が、負けてたまるか!」
一方、聖堂には神谷シンと䋝田セツヤがついに対面しようとしていた。
シンが聖堂の中に入ると、聖堂の中の中心には台座があり、その台座の前にセツヤが背を向けて立っていた。
「こうして実際に会うのは、あの橋以来だなセツヤ」
シンは背を向けているセツヤに話しかけると、セツヤは恐ろしい形相をシンに向けて振り向いた。
「来たか……シン」




