130話 特化バーリル
黒虎連合vs白龍連合の戦いでは、雷神一族、風神一族そしてホワイト国を傘下に収めた黒虎連合に対し、白龍連合は悪魔・天使、そして二千という数のバーリルを放った。
かつて二千体のバーリルという圧倒的戦力を前にした黒虎連合はある作戦を決行する。
「雷神一族A班、作戦実施問題無し!!」
「同じくB班、問題無し!!」
「C班、問題無し!!」
「それでは作戦を決行する!!全班放電準備!!」
黒虎連合の拠点であるホワイト国の城壁にじわじわと押し寄せてくる大群のバーリルに向けて、三方向から4人1組の雷神一族が城壁の上から放電準備していた。
「3の合図で実施する!3、2、1……撃てッ!!!」
その合図とともに城壁の上の三方向から青白い電撃が放電され、その辺りおよそ半径100mを電流が走った。
バーリルたちはその電流に感電し、これによりバーリルたちの頭部、脳にある神経に電流によって異常を発生し、大脳に存在する運動野、身体を動かす思考を麻痺させた。
「あ……うぅぅう……!!」
バーリルたちは抵抗するそぶりを見せたが、動作を起こすことができなかった。続いてそこに城壁から風神一族と剣を装備した黒虎兵が飛び降りてきた。
「一体だけでもいい!!何としても首を討ちとれっ!!」
風神一族と黒虎兵の4、5、6班が動きが取れないバーリルに距離を詰めていった時、その時、異変が起きた。
目の前にいるバーリルたちの上半身と下半身が切断されているのだ。
「あぁ……なん……で……」
バーリルだけではなかった。城壁から飛び降りた黒虎兵と風神一族たちの身体を切断されていた。
身体を切断された黒虎兵の目には、切断されているバーリルたちの背後に何者かがいたのがわかった。
その様子を見下ろしていた白龍連合の指揮、ガルドは呟いた。
「そんな手が通じると思ったか黒虎連合。今お前たちの身体を切り裂いたのは、その手と剣一本で森を消したと言われた灯城正凪の大天使の変化剣、つまり……」
身体を引き裂かれたバーリルたちの背後にいたのは、城壁の高さとほぼ変わらない長さの剣を構えたバーリルだった。
「灯城正凪をモデルにした特化バーリルだ」
城壁の上では混乱が生じていた。
「感電させたバーリルたちが全部倒された!!」
「あの特化バーリルの背後にまだ何体もバーリルが残っているが、再び感電させたところでまた同じだろう……。それに特化バーリルは感電しないらしい……」
「南側城壁に戦力を集中して、あの特化バーリルを撃つのだ!!」
そうガルドたち白龍連合はホワイト国の南側から攻めていていた。が、ここで異変が起きた。
東側、西側の城壁が爆破したのだ。
「な、何が起きた!!」
司令室にいる黒虎連合ボス、ケネスは東側と西側の城壁拠点に応答を求めていた。
「こちら司令室!応答しろ!!何があった!!」
《こちら西側……一体のバーリルにやられた……!!こいつには魔力が効かない!!や、やめろ!!ぎゃあああああああ!!!!》
「……くそ!」
西側は完全に突破された様子で、東側は応答すらされなかった。
「南側拠点から来た情報が正しければ、おそらく魔力が効かないバーリルというのは、誰かしらの細胞を埋め込んだ特化バーリルだ。南側にしろ東側にしろ、西側にしろ特化バーリルを倒さなければ、バーリルの頭の回収は不可能だろう……。だが、特化バーリルを倒す戦力が足りない!」
ケネスがそう呟いていると、レーダーを目視しているルーナが声を上げた。
「何者かが司令室に急接近しています!空を飛んでる模様!」
ルーナの言った通り、ある特化バーリルが城壁を飛び越えて、南側から国の中央に位置する司令室、ホワイト城へと飛行してきていた。
空を飛んでいる特化バーリルの両腕には凄まじい圧が込められていた。
「ガルドめ!直接ここを狙う気か!」
ケネスがそう声を上げるとともに、北側の城壁から朱希羅が走り出していた。
「うおおお!!!」
朱希羅は助走をつけ高く跳躍し、南側から急接近してきた特化バーリルの目の前に現れた。
特化バーリルと朱希羅の拳がぶつかり合い、凄まじい衝撃音を立て両者弾け飛んだ。
その様子を南側の城壁から見ていたパーティ央馬の隊長は気付いた。
「あの衝撃音、あのバーリルのモデルはゴルシャだ……剛迅のゴルシャだ!!」
南側からは灯城モデルのバーリルが、西側と東側はもう既に突破され、国の中央付近でゴルシャモデルのバーリルと朱希羅が戦闘。
黒虎連合の勝利の光は薄く、薄くなっていくのだった。




