129話 たった一つの作戦
「バーリルってあの、本部襲撃作戦の時神谷シンも射撃の虎も黒虎連合の主力が苦戦した奴のことだろ!?そいつが……二千体だと!?」
黒虎連合本部の指令部隊はその情報を聞き、城壁の外にいる軍団を見て驚愕した。
「このまま正面から迎え撃てば間違いなく全滅だ!なにか手はないのか!?」
「囲むにも敵の数が多すぎる!こうなればまだ少しでも戦闘員が残ってるうちに退避したほうが!」
混乱する黒虎連合の者たちにケネスが言い放った。
「静まれ!!」
ケネスは話し続けた。
「私自らが戦場に行く。ここの指揮はルーナに任せる」
「なんですと!?ボスが自ら前線に行くなど!?」
「これ以上、戦士を死なせるわけにはいかない!二千体を全て倒す自信があるわけではないが、命を懸けて半分は潰す。残りはルーナ、お前が指揮をとって潰せ!私が数と時間を稼ぐ!」
「お待ちください!」
司令室を出ようとするケネスをルーナが止めた。
「新たな生体反応がここに近づいてきています!しかも、携帯タイプの黒い箱でこの司令室にです!」
「新たな生体反応だと?」
ケネスは足を止め、生体反応を感知するレーダーを目にした。
するとその部屋にミニサイズの黒い箱が出現し、悪臭漂う煙を司令室にばら撒きながら、何者かを召喚した。
「敵か!?ここは特定した黒い箱でしか来られないはずだ!」
「敵ではないわい」
そこに現れたのはキルビスだった。突如現れたキルビスは戦況を知っているかのように話し出した。
「どうもマズイようじゃの。バーリルが二千体もいるとなっては流石にお前たちだけでは歯が立たないであろう」
「私自らがバーリルたちと戦い、その間に黒虎連合の態勢を……」
「奴らを舐めすぎじゃ。松田隼人や成長した神谷シンが居れば話は別じゃが、奴は恐ろしく強い。それが二千体もいるのじゃ。お前が出たところで瞬殺されるだけじゃわい」
「では、どうすれば……」
「ワシが行こう。久々に杖を立って歩くためではなく、武器として使う時が来たわい」
キルビスはそう言い放つと、その場にいた誰もが驚いた。
「あなたがどんなお方かはわかっています!ですが無理です!杖が無いと立てない方が戦場になど!」
「そりゃ今のワシが出しゃばったところで瞬殺されるわい。だが、過去のワシならな?」
「過去の……キルビス殿とは?」
「魔術とは戦闘以外にも瞬間移動、空中歩行というように様々なものがあるのじゃ。例えば、若返らせるとかもな」
「魔術をですか、ですが魔法結晶があっても黒虎連合には魔術師がいません。魔術は発動できない!」
「魔術を発動する条件は、魔法結晶と魔術の発動計算式が備わっていることじゃ。ワシはこの老いぼれた身体では魔術を発動することも出来ないし、発動計算式は他人に教えることができん。発動計算式は己で習得するものじゃからな。できるとすればワシの脳みそを差し出すことかの?」
「でもそれでは!」
「まあ、ワシは即死じゃろうな。だが、首が飛んでも息ができる奴が外にはいるぞ、二千体もな」
「バーリルが!?そうか、オリジナルのバーリルが白龍連合の魔術師のシェリーの脳を喰らっていた!シェリーの記憶に若返りの魔術の発動計算式が残っていれば!」
「わかったかの?一体だけ、しかも頭だけ回収することができれば、ワシは若返り戦場に行くことができるのじゃ。どうだ?できそうかの?」
「……わかりました、やってみます。ルーナは全隊隊長の無線を繋げて俺の出した指示を伝えろ!一体のバーリルに集中して襲撃し首を獲る!まずは雷神一族の広範囲の攻撃で敵の動きを痺れさせ、風神一族と黒虎兵で敵一体につき二人で首の切断をするんだ!首を無事狩取ることができた場合、何としてでもここまで首を持ってくるように伝えてくれ!それに防御も怠ってはならない!ホワイト国兵の者たちは城壁の武装の強化とバーリル軍団の後方に向けて大砲を撃て!」
ケネスはルーナにそう伝えると、ルーナは全ての隊の隊長にそう指示を伝えた。
「何としてでも勝つぞ!」
ケネスはそう言い放ち、黒虎連合の者たちは二千体のバーリルたちとの勝負に出た。




