112話 追撃者
悪魔城から脱出したセツヤたち白渕を追って、林の中に現れたのは白騎士のセフェウスとゴルガだった。
「シドウとアルバトーラの次はセフェウスとゴルガか。なんだ?お前たちは新しいパーティでも組んだのか?」
「おやおや察しが良いではないか。その通りだ。我々は白騎士。ジラ・バーバリタス様の下に就く精鋭部隊だ」
セフェウスは誇らしげに答えたが、セツヤは呆れた表情を見せた。
「飼い主に従うだけの犬に殺されるほど、僕たち白渕は甘くない。ズタズタにしてやろう」
するとセフェウスはセツヤに向かって急発進した。セフェウス両手にはグローブが装着されていた。
セツヤはセフェウスに装着されているグローブを目で見て確認すると、少し焦った表情を見せ、セフェウスの攻撃を回避した。
「お前ら、セフェウスの手に触れるな。死ぬぞ」
セツヤの思わぬ発言にミズナとフタイは驚きを見せた。セフェウスはニヤリと笑みを浮かべ話し出した。
「よく観察できているじゃないか。その通り、私のこの右手に触れた瞬間、君たちはこの悪魔武器、魔女の素手によって石化する。子供が相手だからと言っても容赦はしないぞ」
するとセフェウスはフタイに向かって走り出した。フタイは大天使の変化球を槍状の姿に変形し、襲いかかってくるセフェウスに向けて投げ飛ばした。しかし、セフェウスはその槍状の光に右手で掴むと、その槍状の光は石となりその場に落ちてしまった。
「光をも石化するのか!」
動揺したフタイは一瞬の隙を突かれ、セフェウスの右手がフタイの頭に触れようとした。その瞬間、セツヤが魔覇の神剣を振りかざし、セフェウスへと襲いかかった。
「おっと」
セフェウスはフタイの頭には触れず、セツヤの攻撃を回避し、フタイとセツヤから距離を取った。
「すまない、完全に俺が甘かった」
「肝に念じろ、こいつらは強い。特にこのセフェウスという男はな。一瞬の油断が命取りだ」
謝るフタイにセツヤはそう指示を出すと、セフェウスはゆっくりと歩き出しながら話しかけた。
「䋝田セツヤ、まさか自分には超重圧があるからと言って、私の右手は触れられない。とでも思っているんじゃあるまいな?」
「僕の超重圧を破った者は感情を失くしたキシラ・ホワイトだけだ。お前では破れない」
「ではその言葉、撤回させてもらおうか」
するとセフェウスはゆっくりと歩いていた足を急に走らせ、セツヤへと襲いかかった。セツヤからは超重圧が放たれていた。セツヤから放たれるそれを受けた者はどんな者であれ、自分では気づかないが通常通りの動きができず、セツヤに攻撃を与えることは100%不可能にしてしまうラグメニムル家の能力。しかし、その能力は感情を持たない者などには効果は無い。セフェウスは人並みの感情を持っていた。
はずなのにである。
セツヤの頭に掴みかかる瞬間、セツヤは死を直感した。何故かセフェウスは超重圧の効果を受けていなかったのである。セツヤはギリギリで右手を避け、すぐにセフェウスを蹴り飛ばした。死を直感したセツヤは息切れを起こしていた。息をすることができなかったからである。
「ハァ……ハァ……。なぜた?なぜ効かない?」
「ククク、やはりそうだったか。私の悪魔武器は魔女の素手だけではない」
するとセフェウスは長い金髪の裏に隠れていた耳を見せつけた。その耳にはイヤリングがつけられていた。
「結界の耳飾り。この耳飾りは私の周囲に結界を張り、全ての特殊効果を打ち消す。君の超重圧も例外ではない」
白渕の司令塔、セツヤの奥義は破られた。




