110話 白騎士襲来
突如、悪魔城に現れた白騎士のアルバトーラとシドウ。アルバトーラは悪魔王の姿を見て、舌で口を舐めながら言い放った。
「ヒヒヒ、見つけたよ悪魔王!」
セツヤは白騎士の姿を見ると、無意識に現状分析を始めていた。
(アルバトーラとシドウか。アルバトーラの言動からこいつらの目的は悪魔王の討伐だろう。ここはこいつらと手を組んで悪魔王と松田隼人を倒すか。いや、その後どうなる?白龍連合を脱退した我々をこいつらが見過ごすとは思えない。交戦するとなると今は厄介だ。ならば……)
セツヤはそう考えた直後、白渕に指示を出した。
「撤退するぞ、非常用の黒い箱を使え!」
すると白渕のメンバーはミニサイズの黒い箱を取り出し、それぞれ人間界に移動しようとした。しかし、アルバトーラは白渕のメンバーに襲いかかる。
「アンタらも逃さないよ!裏切り者ども!」
するとアルバトーラの口から三体の蛇が姿を現し、蛇は一体ずつミズナ、フタイ、セツヤに向かって高速で襲いかかった。
セツヤには超重圧で蛇の攻撃は当たらず、ミズナは蛇に左肩を噛み付かれたが、そのミズナは幻覚で作られた偽物で本物は無事に黒い箱で脱出した。フタイは襲いかかってきた蛇を迎え撃ち、形態変化する光の玉を扱い、剣の形に形態させ、蛇の身体を斬り裂いた。
セツヤとフタイも無事に脱出した。
白渕のメンバーはその悪魔城から姿を消した。その様子を見ていたシドウは呟く。
「逃げられたな。まぁいい。悪魔王をさっさと殺すぞ」
「ちっ、1人だけ致命傷を与えたが逃げられたか!」
人間界の森林の中に白渕のメンバーは転送されていた。セツヤは問いかける。
「全員無事か?」
するとキビルの様子が何やらおかしかった。うめき声を上げて倒れ伏していたのだ。セツヤはフタイに指示を出した。
「フタイ、キビルの怪我を見てやれ」
「わかった」
フタイはキビルの怪我の様子を見た。なんとキビルの右腕がほとんど溶けていたのだ。いつ腕が千切れてもおかしく無いほど溶けていた。
「腕が溶けている。骨もやられているな」
「アルバトーラの毒液だな。フタイ、毒抜きはできるか」
「今やっている」
フタイはキビルの溶けた右腕を完全に切断し、傷口に手を添えた。
その治療の様子を見ていたセツヤは思う。
(女神の血を引く者は体内にある異物を除去できる能力を持っている。フタイがいて助かったな。さすがアルバトーラと言ったところか、奴の攻撃はかすり傷でも負ってしまえば体内に毒がまわり、やがて死ぬ。それにシドウまでいたとは。俺はともかく、ミズナやフタイが無事に逃げ切れたのは奇跡かもしれんな)
その頃、悪魔城では朱瑩と白騎士のアルバトーラとシドウが戦闘を始めようとしていた。
だが、松田隼人はシドウの姿を見て硬直した。
「お前は……」
松田隼人は思い出した。三代目悪魔王のレアルが殺されたあの日のことを。レアルに銃弾を打ち込んだ軍人服の男のことを。その軍人服の男、シドウが松田隼人の目の前にいるのだ。
「あの時の……!!」
すると松田隼人は鬼神化し、瞬間的にシドウの背後から攻撃を仕掛けた。しかし、シドウの背後に周り込んだ松田隼人に三体の蛇が襲いかかり、松田隼人は三体の蛇によって建物の壁に押し潰されてしまった。
「ひゃははは!アンタの身体には猛毒が注入されたよ!英雄討ち取ったりー!ヒヒヒ!」
アルバトーラはそう笑い声を上げていたが、松田隼人の身体を魔神が包み込んでいて、蛇の攻撃を魔神が防いでいた。
そのことを知ったアルバトーラは笑いを止め、松田隼人を睨みつけた。
「ちっ、ただじゃ倒せないってか。最強の魔術師の生まれ変わりさんよぉ」
「……そこを退け」
松田隼人はアルバトーラにそう言い放つと、アルバトーラの足は震えだし、松田隼人の前から退いていた。
(なんだこれは!?超重圧ではない!何なんだ!?だが、これはわかる!奴と相手したらマズイ!)
アルバトーラは無意識に危険を察知していた。今の松田隼人は殺気に満ち溢れていたのだ。
「いいだろう、かかって来い」
シドウは戦闘態勢を取り、松田隼人から放たれる殺気に受け答えた。




