107話 集められた4人
天使界の王宮の門前に白い光とともにゴルガが姿を現した。白い箱を使い、人間界から天使界に飛んできたのだ。
ゴルガは門に手を触れるとその門はゆっくりと開き、ゴルガは王宮の中へと足を踏み入れた。
王宮内の階段を上り、ある部屋の前へとたどり着いた。ゴルガは部屋の扉の前で立ち止まり、また扉に手を触れた。
すると扉は勝手に開き出し、ゴルガはその部屋へと入った。
その部屋には円形で椅子が並べられており、ジラ・バーバリタスやガルド、その他にも3人の人物がそれぞれの椅子に腰掛けていた。
「遅かったなゴルガ。来ないのかと思ったぞ」
ジラ・バーバリタスは入室してきたゴルガにそう言うと、ゴルガは頭を下げつつ椅子に腰かけた。ジラ・バーバリタスは集った者たちに話をした。
「天使界を制圧し、天使どもを手懐けたことにより準備は整った。我々白龍連合は天使界からの全軍を率いて黒虎連合の襲撃作戦を決行する。しかし、白龍連合は天使界を制圧したとしてもはっきり言って戦力が不足している。そこでジウル、セフェウス、アルバトーラ、シドウ。お前たちに作戦の参加を要請する」
「失礼ですが、私の名はゴルガです。ジウルとは一緒にしないで頂きたい」
「そうかゴルガだったか。それは失礼したな」
ジラ・バーバリタスはそう訂正すると、椅子に腰掛けていたアルバトーラと呼ばれる女性が口を開いた。
「名前なんてどうでもいいじゃない。アタシはそういうネチネチした男は好きじゃないね」
アルバトーラはゴルガに文句を垂れると、ゴルガはアルバトーラを睨みつけ言葉を浴びせようと口を開いた瞬間、そんな二人を止めるようにセフェウスという金の髪に黒いコートを着込んだ男性が口を挟んだ。
「これこれ、よさないか、ジラ・バーバリタス様の前で争いごとなど失敬極まりない。ジラ・バーバリタス様は我々を信用なさっておられるのだ、そんなことで言い争っている場合ではないだろう」
「その通りだねセフェウス、アタシが悪かったよジウ……おっと、ゴルガ。ケッケッケッ!」
アルバトーラはわざとらしくゴルガの名前を間違えながら答えた。ゴルガはアルバトーラの挑発を無視し、ガルドに問いかけた。
「黒虎連合を襲撃すると言っても、具体的にどう仕掛けるつもりだ?」
「いや、恐らく襲撃を仕掛けるのはこちらだけではなくあっちも同じだろう。黒虎連合からしたら、もはや白龍連合は壊滅状態で、一気に追い打ちをかけたいはずだ。だが、黒虎連合は我々の傘下に天使軍とお前たちがいることを知らない。そこで黒虎連合の戦力を激減させ、こちらが一気に畳み掛ける」
「つまり黒虎連合と全面戦争になるということだな?」
「そうだな。白龍連合は本部を制圧されたとはいえ、戦力は黒虎連合より劣ったわけではない。全面戦争で必ずや奴らを壊滅させる」
ガルドはそう言い切った。するとアルバトーラが少し不機嫌そうに口を開いた。
「はんっ、黒虎連合なんざアタシやシドウで充分さ!セフェウスにあんまり好みじゃないけどゴルガもいるしな!」
「いや、黒虎連合は正直強い。あの完全体バーリルが倒されたんだ。お前らも完全体バーリルを無傷で倒すのは至難の技だろう?それに黒虎連合は独立パーティの朱瑩を収めている。奴らは強い、特に松田隼人はな」
「まぁ、そのぐらいじゃなきゃつまらないさ。丁度いいくらいだよ!」
ガルドの返事に対してもアルバトーラは強気だった。かなり自信があるのだろう。
アルバトーラ、シドウ、セフェウス、ゴルガの四人は白龍連合の傘下に入ることを承諾すると、今までずっと口を閉じて椅子に座っていたジラ・バーバリタスが口を開いた。
「お前たち4人の名は‘‘白騎士”と命名する。白龍連合の幹部と同等の権力を有する戦闘隊だ、期待しているぞ。ところでだが……」
ジラ・バーバリタスはその部屋に飾られている二代目天使王ラファエルの肖像画に片手を向け金色のパネルを集め、そのパネルから放たれる光によって肖像画を破壊した。
「私は今、天空界の実権を握り三代目天使王となった。天空界は制したのだ。あと残るは悪魔界と人間界。まず制服するのは悪魔界だ。聞いた話によれば脱退者の䋝田セツヤも狙っている。白騎士、お前たちで悪魔王の首を殺れ。天空界と悪魔界を支配した後、その勢力を持って黒虎連合を叩く。そして全ての世界を制した私はーー」
白騎士たちやガルドは静かにジラ・バーバリタスの話を聞いていた。ジラ・バーバリタスは拳をゆっくりと握り締めながら言い放つ。
「ーー全世界の神となる」
「ジラ・バーバリタス様は既に神と呼ばれる崇高なお方でございます。それを理解しない者共に神の裁きを、粛清を、鉄槌を下しましょう」
ガルドは頭を下げつつそうジラ・バーバリタスに答えた。ジラ・バーバリタスはガルドをしばらく見た後、話し出した。
「私が神となるには全世界を支配するのはもちろん、そして絶対的な力が必要になる。例えば全人類が相手になっても屈しない絶対的な力がな。6ヶ月後の皆既日食で私はその力を取りに行く。それと同じタイミングでガルド、お前の指揮のもと黒虎連合の襲撃作戦を開始しろ。その時には黒虎連合には松田隼人も神谷シンもいないだろう。その二人は私と同じように‘‘約束の地”へと来るはずだからな。あの二人を裁くのは、私だ」
「承知しました。ジラ・バーバリタス様」
ガルドは深々と礼をした。ジラ・バーバリタスは野望に満ちた目で運命の鍵を見つめ答えた。
「約束の時は、着々と近づいてきている……」
その頃、セツヤ率いる独立パーティ白渕はアジトである洞窟内で戦闘準備を済ませようとしていた。
「お前たち、準備はできたか?」
「俺は大丈夫ッスよ、俺が一番荷物多いからいつも大変なんだよね」
キビルはガチャガチャと色々な物を白いコートの内側にしまい込みながら答えた。
するとフタイがセツヤに言った。
「悪魔王に取り付けた発信機が強い魔力を悪魔城で感知した、恐らく朱瑩だ」
「よし、悪魔界へ移動する。ターゲットは独立パーティ朱瑩の司令塔、松田隼人の抹殺だ」
セツヤがそう白渕メンバーに指示していた同刻、天空界の王宮でジラ・バーバリタスが白騎士たちに指示していた。
「今からお前たちは悪魔界へ向かい、襲撃を開始しろ。狙うは悪魔王の首だ」
セツヤ率いる白渕、ジラ・バーバリタスの支配下にある白騎士たちが悪魔界への襲撃を開始しようとしていた。




