97話 デュージルの故郷
「こっちは終わったぞ、フタイ」
四代目悪魔王ラースの側近だった悪魔はミズナの手によって倒されてしまった。
フタイはラースと互角の戦いをしていた。
フタイはラースと拳を交えつつ話しかける。
「体術はなかなか自信があったんだが、アナタもやるな。悪魔王」
「そこまででもないさ」
ラースは返事を返すとともにフタイを殴り飛ばしたが、フタイが殴り飛ばさせると同時にラースの身体はフタイへと引き寄せられ、フタイは引き寄せられたラースを強烈なパンチで殴り飛ばした。
「もう撤収するぞフタイ。これ以上の戦いは無意味だ」
ミズナがそうフタイに言った。
フタイはミズナの言う通りに拳を下ろし、殴り飛ばしたラースへ向けてこう言い残した。
「我々は革命を起こす者。無駄な抵抗はよせ、悪魔共」
フタイはそう言い残すと、二人は悪魔城から姿を消した。
残されたラースは起き上がりながらこう呟いた。
「松田隼人に知らせなければ……!」
その頃、パーティ豪蓮はデュージルが脱退したため、ネヴァ、トルシャ、メルタの三人で編成されていた。
シンが日本で修行している間、シンの代理として入隊したメルタは、脱退したデュージルの後釜として改めて豪蓮に入隊し、自我を失い黒虎連合から姿を消し、ゴルガとして豪蓮パーティを襲ったデュージルは黒虎連合が白龍連合の残党として犯罪者と認識した。
デュージルの後を追跡するため、黒虎連合は二つの部隊に捜査を指示した。その一つが豪蓮パーティである。
ネヴァ、トルシャ、メルタの三人はある村に来ていた。森の中にあり、森のすぐ近くには海があった。
「ここがデュージルさんの故郷……」
ネヴァは森の中に生えている木々を眺めながらそう呟いた。三人は村の門の前にたどり着いた。
「よそ者か?ここへ何をしに来た」
その村の門番と思われる鎧を身につけた男はメルタたちに問いかけた。メルタは答える。
「我々は黒虎連合の者。この村に住んでいたデュージル……ジウルの知人だ。彼の家に案内して欲しい」
「ジウルは今村を留守にしているが。まぁ、良かろう。ついて来るが良い」
門番はそう言うと、大きな門を片手で開け、メルタたちをジウルの家まで案内した。
村の道を歩き続けていたが、まだ村人とは一人も会ってない。メルタはそのことを少し疑問に思った。
ジウルの家は木材で建築された家でその家の庭にある薪割り場は何年も前から使い込まれたような傷跡が残っていた。
メルタはジウルの家の扉をノックした。しかし返事は無い。
「言ったろ、留守だってよ」
門番がそうメルタに言った。
「家族もいないのか?」
「両親が居たんだが、先日亡くなった」
「どうして?」
「何者かによって二人とも刃物で殺傷されていたんだ。犯人はわからない。盗賊かとも思ったが何も物は無くなってないらしいからな。この物騒な事件が起きてからこの四日間、村の皆は外に出ることを完全に恐れてしまった。外に出てる奴なんて俺のみかもしれないな」
「じゃあ、犯人をきっちり見つけ出せば、皆安心して外には出れるんですね?」
ネヴァが口を挟んだ。門番はネヴァへと目線を向けながら答える。
「確かにそうなるが、そう簡単にいくとは思わん。犯人は四日前にここに来て、もうどこに行ったかもわからんからな」
「大丈夫です。家の家具や写真は壊されたり盗まれたりしてないんですよね?なら大体犯人の予想はついています。そしてその犯人は近いうちにまたこの家に来る!」
ネヴァはそう言い切った。メルタとトルシャもネヴァが言っている犯人という者がわかっていた。
「五日間、俺たちをこの家に住まわせて下さい。お願いします」
「わかった。もしお前たちが犯人を捕まえられたら、それなりの報酬をやろう。俺の名はガーリックだ。よろしく」
「メルタだ」
メルタとガーリックはお互いに手と手を組み合った。