96話 二人の訪問者
白龍本部襲撃作戦終了の二日後、神谷シンは再び修行を再開するため、日本の長野へとキルビスとともに旅立った。
一方、黒虎連合は白龍連合本部から逃走したジラ・バーバリタス、ガルド、バーリルの行方を追うため、5つの小隊を編成し、捜索に出していた。
もうほぼ白龍連合を壊滅させたと言っても過言ではなかった。
その頃悪魔界では、ある二人の人物たちが悪魔城へと訪れていた。
三代目悪魔王のレアルの死後、ラーシの弟のラースは四代目悪魔王となっていた。四代目悪魔王のラースはその二人を城の中に入れることを許可し、二人はラースと顔を合わせた。
二人の素顔はフードに隠れていて見えなかった。ラースはそんな二人に問いかける。
「君たちは何者だい?」
「我々は白渕パーティの者。松田隼人の行方を知るためにここに訪れた」
するとフードをかぶっている背の高い男がそう答えた。ラースは問いかける。
「松田隼人を探してどうするのさ」
「それは言えない。松田隼人の居場所を教えてくれるなら、教えてやろう」
「じゃあ、こうしよう」
ラースはそう言うと、悪魔の兵士たちが二人を取り囲んだ。その数は20人ほどだろう。
取り囲まれた二人のうち、背の高い男はボソッと呟く。
「なるほど、そう来るならーー」
背の高い男は天井に手のひらを向けると、手のひらに魔力の塊が発生し、その魔力は形状を急変化させ、その魔力の塊から伸びたトゲが20人もの悪魔の身体を貫いた。
「ーーこちらも相応の対処をしようじゃないか」
「それは天使武器。只者じゃ無いみたいだね」
ラースはそう言うと、剣を持った悪魔がラースの隣に現れ、ラースにこう言った。
「御一人じゃ危険です!ここは悪魔王様の側近である私が援護します!」
「あぁ、君はあのもう一人を頼むよ。僕の大切な部下を殺した男は、僕が殺る!」
ラースはそう言うと、背の高い男へと打撃を仕掛けた。
男はそのパンチを受け止め、ラースを投げ飛ばしたが、その男の周りには何匹ものアゲハ蝶が舞っていた。
「これは……悪魔武器か!」
「ゆけ、魔弾の蝶々」
ラースはそう合図を出すと、男の周りを舞っていたアゲハ蝶たちは一斉に男へと急接近し、自爆することで大爆発を起こした。
ラースはすぐに戦闘態勢を取り直し、爆煙の中にいる男の様子を伺った。
その男のフードは爆風で脱げてしまい、男は素顔をラースへと向けた。その男はセツヤ率いる白渕パーティのフタイという男だった。
フタイはもう一人のフードを被っている女にこう指示を出した。
「ミズナさん、もうフードも意味ない。戦闘の邪魔になるだけだ。脱いだ方が良い」
「私もそのつもりだフタイ。どうやらこの人たち相手に遊びでは通じないだろう」
ミズナという女もフードを脱ぎ捨て、その素顔を現した。
ミズナの相手をしていた剣を持った悪魔はミズナに向けて攻撃を仕掛けた。ミズナはその攻撃を避け続けていたが、剣を持った悪魔は予測できない動きを発揮し、ミズナを剣で斬りつけた。
ミズナの腹部に浅い斬り傷を負わせ、そのままミズナを蹴り飛ばした。
「四代目悪魔王様の側近を舐めるな!」
「舐めてませんよ」
ミズナはそう言いながら立ち上がると、ミズナの腹部にあった斬り傷は跡形もなく消えていた。
「……天使武器か?」
「貴方はもう、私の手の平で踊っている」
「戯言を!」
剣を持った悪魔はミズナの背後に回り込み、背後からミズナに剣を突き刺した。
「どうだ!」
「……ぬるい」
剣を貫かれたミズナはそう言うと、貫かれた剣を引き抜き、その悪魔へと迫った。
「バカな!死なないだと!」
剣を奪われた悪魔はミズナから距離を取った。
「貴方はもう堕ちてしまった、私の幻想に」
ミズナはそう言うと、フタイとラースがミズナへと姿を変え、倒れていた20人もの悪魔たちもミズナへと姿を変えた。
20人あまりのミズナたちは剣を奪われた悪魔を囲み、その悪魔を取り押さえた。
「貴方の脳神経を完全に手中に収め、その脳神経をコントロールすることで、貴方はこのような幻想を見ている。幻想での痛覚はそのまま脳神経を通して脳を反応させるため、激しい痛覚が貴方を襲うでしょう」
すると悪魔から剣を奪ったミズナが、取り押さえた悪魔の身体に剣を突き刺した。
「ぐあああ‼︎‼︎」
「そしてその痛覚は酷ければ酷いほど、脳神経への負担を大きくし、やがて脳の機能を停止する」
するとミズナは悪魔の身体に大きな穴を開けるように突き刺した剣をグリグリ引き回した。
「ぎゃあああああ‼︎‼︎」
「では、そろそろ眠ってもらいましょう」
ミズナはそう言うと剣を引き抜き、悪魔の頭に突き刺した。
「脳死後、身体は随意運動を麻痺させ、心肺を停止し、やがて死に至る」
その悪魔の意識はだんだんと薄くなっていき、次第にその悪魔は意識を失ってしまった。