93話 完全攻略
(どうなっている⁉︎朱希羅は突如、瞬間移動し、当たるはずの攻撃を避け、避けたはずの攻撃を食らわすことができるだと⁉︎)
バーリルは朱希羅を睨みつけそう思っていた。そんなバーリルに朱希羅は見下しながらこう言う。
「どうした。その程度か」
「口の減らない野郎め!」
バーリルはそう怒鳴ると、朱希羅へ向けて走り出した。
「学ばない奴だな」
朱希羅はそう言うと走っているバーリルの目の前に時間を止め移動し、攻撃を仕掛けた。
(そう来るのはわかっている!次に来るのは蹴り!)
バーリルはそう予測し、バーリルが予測した通り朱希羅は蹴りを放ち、バーリルはその蹴りを避けたが、何故か避けたはずの蹴りがまたバーリルの顔面にめり込んだ。
「な!んっ、でだ‼︎」
バーリルは蹴りに絶え、朱希羅に向けてパンチを放ったが、そのパンチは朱希羅には直撃せず、朱希羅はバーリルを殴り返した。
「まだやるか?」
朱希羅はそう問いかけると、バーリルは少しニヤつきながらこう答えた。
「ククク、そういうことか。わかったぞ、お前を倒す方法が」
「倒す方法だと?」
朱希羅はそう問いかけると、バーリルは手のひらに炎の魔力を発生させた。するとその炎を自らの頭に灯した。
バーリルの頭には毛髪は無いが、何故かバーリルの頭は燃え上がり、炎が焚き火のように灯っていた。
(あれが俺を倒す方法だと?自傷行為にしか見えないが……)
朱希羅はそう思いながら、時間停止で瞬間的にバーリルの背後に移動した。
しかし、朱希羅は移動した瞬間、バーリルは背後も振り向かずに真後ろに蹴りを放ち、移動したばかりの朱希羅を蹴り飛ばした。
「ぐあ!」
「ククク、思った通りだ!お前は超高速で移動する能力を持っている!その超高速移動をした際の風向きを読めば、そこがお前の居場所ということだ!」
バーリルはそう呟くと、すぐに蹴り飛ばした朱希羅へと追い打ちを仕掛けた。
朱希羅は迫り来るバーリルに対して、空間を歪ませ回避しようとしたが、バーリルは朱希羅に両手を向けてこう言い放った。
「そんな小細工!無駄だ!」
するとバーリルは両手からエネルギー波を放った。そのエネルギー波は歪んだ空間をも覆うような範囲で放たれたため、歪んだ空間ごと朱希羅を吹き飛ばした。
(くそ!まさか本当に攻略されたとは!このままじゃ、勝てねぇ!)
朱希羅はそう考えながら態勢を整えると、再び空間を歪ませ、そして時間停止の能力でバーリルの目の前に瞬間的に移動した。
しかし、バーリルはこう言った。
「それは空間を歪ませたことにより見える囮!」
するとバーリルは目の前にいる朱希羅を無視して背後に蹴りを放つと、その蹴りは空間を歪ませたことで身を隠した本物の朱希羅に直撃した。
「ぐっ!」
「空間を歪ませたように見せても、本物の居場所は頭に灯っている炎ですぐわかる!お前はもう何をしても無駄だ!」
するとバーリルは朱希羅を殴り飛ばした。
戦士にとって、自らが持つ武器や能力を完全に攻略されてしまうということは、それは敗北への一歩手前と同じ意味になる。
そしてそれは今の朱希羅も同じ状況だった。
為す術もない朱希羅はその場に倒れ込んでしまった。
そんな朱希羅にバーリルはトドメを刺そうと前へ出た。
「死ねぇ」
バーリルは片手を倒れ込んでいる朱希羅へと向け、魔法弾を放った。しかし、その魔法弾は何者かによって弾き飛ばされ、その場を囲っている砦の壁に直撃した。
「皆、遅れて済まない」
そこに現れたのは松田隼人だった。悪魔の継承を取り戻した松田隼人は再びバーリルの前に立ち上がったのだ。
「また邪魔が入ったな、今度はお前か!」
「お前は2分で片付ける」
松田隼人はそう言い、身体の三割を悪魔化させた。