8話 自由無き悪魔アザエル
松田隼人の襲撃を何とか耐え、天魔の聖堂の最深部への扉を開くため、ユリシスは扉の鍵を召喚する。しかし、それは全てガルドの仕組んだ計画であった。シンは敵意を見せるガルドと交戦。しかし、隙をつかれ、ガルドにユリシスを連れ去られてしまう。
しかし、ユリシスは連れ去られる瞬間、シンの足下に天満の聖堂の最深部への鍵を置いて行ったのであった。
「ユリシスが置いて行ったこれは……鍵……なのか……?」
俺はその鍵を拾い、天満の聖堂の奥にある扉の前に立った。
(この先に何が……?ガルドがあんなに欲しがる何かがあるのか?)
俺はその扉を開けた。扉の向こうには地下へと続く階段が永遠と続いているようだった。
俺は何かに誘われるように、その階段を降りて行った。
しばらく降り続けて、暗闇の奥に怪しく灯った松明と扉を発見した。
俺はその扉を恐る恐る開けた。
その扉の向こうは行き止まりで、その部屋には人間と天使と悪魔を描いた壁画の前に、蒼い結晶の首飾りが台の上に置かれていた。
俺はその蒼い結晶の首飾りを手に取り、呟いた。
「ここが、最深部か?」
「その通りさ!」
その声は突然聞こえた。
俺はその声に反応し、辺りを警戒した。
「しっかし、よくここまで来たねぇ。奇想天外だぁ」
「お前は誰だ!どこにいる!」
俺はそう問いかけると、俺の手元から声が聞こえた。
「ココだよ、ココ!」
その声は蒼い結晶から聞こえていた。
すると、蒼い結晶から何者かが飛び出して来た。
それは悪魔だった。
「お前は、この結晶の中にいたのか?」
「ご名答~!俺はこの結晶に何故か封印されちった悪魔だよ!」
その悪魔は全身がカラスのような羽で覆われていて、縦に伸びた蒼い髪をしていた。
「俺の名はアザエル。恐らく現世で最後の魔神に選ばれし三悪魔さ」
「メレポ……なんちゃらって何だ?」
「いや、気にしなくていい。お前には多分、関係ねぇからな。お前、この先どうすんだ?人間界は何者かによって悪魔界へと化すばかり。ユリシスっていう女を助けに行くって言っても、どこにいるかもわからねぇ」
「今、世界がどうなっているのかわかるのか⁉」
「ある程度は知っている。人間界が悪魔界へと化して行くのは直感だが、ユリシスのことは見ていた。この聖堂の範囲内は全て俺の視野にある。で、どうするんだ?」
「どうすればいい?」
すると、アザエルはニヤリと笑い、俺に言う。
「俺と契約しろ。すれば力を貸してやる」
「契約?代償とかあるんだろ?なんだ?寿命とか命か?」
「あ?そんな訳ねぇだろ。お前がそうしたいならしてやってもいいが」
「で、契約の代償は何だ?」
俺はそう問うと、アザエルは答えた。
「“自由”さ」
「自由?」
「魔神に選ばれし三悪魔には、三種類の悪魔がいる。呪い、憎しみ、裏切り。だが、俺は四種類目の悪魔、“自由無き悪魔”さ」
「自由無き……悪魔……」
「お前がもし、俺の力を持つことになったのならば、この現世の混乱を止めるため、戦わなくてはならない。その契約が解除できるのは、現世が安定を保つまで戦うか、お前が戦いで死ぬまでだ」
「俺は、力を得るためにここへ来た。天満の聖堂に。力を得るのは戦うためだ。守りたい人を守るために。いいだろう、契約しろ」
「へっ!」
俺はそう言い、アザエルは軽く笑い、俺たちは契約した。