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プロローグ
『わ、私たち、どうなっちゃうのかな……?』
宇宙服に身を包んだクレアが、傍らにいる麻里にしがみつきながら聞いた。
尻もちをついている彼女らの眼前では、カプセル状の物体から身を起こし、立ち上がろうとする人影があった。
いや、人ではない。彼らが対面している場所は、大気のない月の地下なのだから。
それでも、少年の姿をした『それ』は、呼吸ができずに苦しむ様子もなく、自らが眠っていたカプセルの上に立とうとしている。
――やっぱり、アンドロイドだったんだ。
麻里はそう思い、同時に先程から感じている危機感が現実のものとなったと確信した。
最近は大きな事件にはなっていないが、こうした“過去の遺産”を動かしてしまう事の危険性はよく知られていた。
特にその遺産が、目の前のアンドロイドのように自由に動ける存在なら尚更。
少年型のアンドロイドは、ゆっくりと目を開け、こちらを見下ろしてくる。
ますますしがみついてくるクレアを支えながら、麻里は走馬灯のように今日という日を思い返していた。