理想的な白色
やあ、こんにちは。
僕の名前は―――・・うん、面倒くさいからのちのち紹介することにするよ。
それより、ここはどこだと思う?
――――そう、無だよ。この世界には何もない、ただの真っ白な箱のようなものさ。何も見えないでしょ。四方八方真っ白で、壁も床も天井も何もかも存在しない世界だ。
つまらない?
だってしょうがないだろう?ここには何もないんだから。でもね、何もないとそれはそれで楽だよ。だって、何も存在しないんだから。人間関係で恐れることもなければ、恋愛で苦しむこともない。キミだって一度は思ったことあるだろう?
この世界からいなくなりたい――――・・てね。
ここはそんな願いを叶えた場所なんだ。
でも、やっぱり独りってのも寂しいよね。だから、人を呼び寄せようとも思ったんだけど。何しろ呼び寄せるにはあまりにも毒々しい人たちだったから。
狂った赤色。
無力な桃色。
嫉妬深い橙色。
嘘つきな黄色。
無関心な緑色。
冷酷な青色。
非現実な紫色。
自分勝手な黒色。
優しすぎる茶色。
そして、僕の世界。
僕の理想によって創られた汚れたモノは何もない、理想的な白色。
僕は僕の他に、九人を呼び込もうとしたんだ。でも、皆色を持っていた。
充分すぎる濃い色をね。あんな人たち、呼び寄せただけでこの真っ白な世界が汚れちゃう。
だから、諦めた。
当分は独りでもいいかな、って思った。ま、この完璧な世界が汚れるよりはマシでしょ。
僕が出会ってしまった、毒々しい十の物語。
※修正。紫色を入れるのを忘れていました、すみません。