-初デート-
「…眠れなかった…」
時計をみると6時。まだ約束の時間まで4時間もある。
でも、あたしの胸はドキドキが止まらなかった。
早く起きてもお兄ちゃんが不思議がると思い、とりあえず部屋で今日の服を選ぶことにした。
「…楓、どんなのが好きかな?」
無意識に言っていたことに後から気付き恥ずかしくなる…///
気付くと1時間が過ぎていた。
「うそっ!!」
あたしはリビングに向かった。お兄ちゃんが朝ごはんの支度をしててくれた。
「おはよう。お兄ちゃん」
「おはよう優紀。そだ、お前今日なんか予定あるか?ないならお兄ちゃんと出かけない?」
こうやってお兄ちゃんはいつも気遣ってくれる。でも、今日は…
「ごめん。今日は約束があって!晩ご飯までには帰ってくるから」
「そっか。わかった。じゃ俺は1日部屋でのんびりしてよっかな」
あたしは、ご飯を食べ部屋に戻った。
シャワーを浴び、いつもより女の子に見えるように髪もセットしメイクをした。
服は先週買ったばっかりの新品。
「よしっ!!」
時計を見ると9時半を過ぎてる。急がなきゃ!!
「お兄ちゃん。行ってきまーす!」
「あぁ。行ってらっしゃい。…ん?優紀、なんで女の格好してんだ?約束なら学校の奴だろ?」
お兄ちゃんの言葉なんて聞こえてなかった…
「はぁ。はぁ。…」
着いた。
時計を見たら5分前。間に合った…まだ、楓は来てないみたいだ。よかった…
時計が10時をまわった。
「あれ?おかしいな…。約束は10時だったよね?」そんなことを考えながらもう少し待っていた。
「アド、聞いておけばよかったな…」
その時…
「優紀!!ごめん。遅れた!!」
「ほんと、遅いよ!!」
そう言って声がした後ろを振り向くといつもとは違う、本当の楓がいた。
カッコいい…///
でも、口にしない。そんなこと言ったら、楓が調子にのっちゃう…
沈黙が続いた…先に沈黙を破ったのは楓だった。
「…優紀。本当の事言っていい?」
「な、なに?」
「…かわいすぎ!!俺以外には見せるなよっ…!って俺何言ってんだ…」
えっ!?
あたしの聞き間違いだと思うくらい嬉しい言葉…また顔が熱くなる。
なんで楓はこんなに素直に言えるんだろう。あたしも、勇気を出した…
「楓もカッコいいよ…///」
今日のあたしはおかしい…この前まで、あんな関係だったのに…楓の言葉に、行動に、あたしはどんどん惹かれている。
「そういえば、どこ行く?」
この空気を断ち切るようにあたしは聞いた
「あっ。俺行きたいところがあるんだ。いい?」
「いいよ。どこなの?」
「着いてからのお楽しみ。楽しみにしててよ!!」
あたしたちは、駅に向かい電車に乗り、すこし町から離れたところに来ていた。
「こんなところに何かあるの?」
楓に聞いてみた。
「もうちょっと待って。あと少し」
「…うん。」
楓が立ち止まる。
「優紀。ちょっと、目閉じてて」
あたしは言われた通り目を閉じた。
「今日の優紀、素直だね。じゃ、ちょっと歩くよ」
また、顔が熱くなった。楓に手を引っ張られ少し歩く…
「いいよ。あけて…」
あたしはゆっくりと目をあけた
「うわぁ!!」
そこにはクローバーがいっぱいの草原が広がっていた。
誰にも言っていないがあたしはクローバーが大好きだった
「ここなら、誰にも見つからないし。本当の優紀でいられるでしょ?」
「…えっ!?」
信じられない言葉だった。
あたしを気遣ってここにしてくれたことにあたしは胸がいっぱいになり。
泣いてしまった。
「どうしたの?優紀?こんなところじゃイヤだった!?」
楓は突然泣き出したあたしに驚いてるようだった。
「……ううん。…うれしくて、楓ありがとう…」
その時、あたしは楓に引き寄せられ気付いたら腕の中にいた。今日はイヤじゃない…
「優紀がどうして男装してるかなんて俺からは聞かないから。でも、辛くなったら俺がまたここに連れてきてあげる…」
「…うん。」
あたしはしばらく楓の腕の中で泣いていた。
どれくらい時間が過ぎただろうか…泣き疲れたあたしは楓の腕の中で眠ってしまっていた。
たぶん、昨日眠れなかったせいもあるんだろうけど…
「優紀?起きたの?」
上から優しい声がした。
「ごめんね。寝てたみたい…」
あたしは恥ずかしくなって楓から離れた。
「いいよ。優紀の寝顔見れてラッキーだったし」
そこには意地悪な楓がいた。でも、この前までの嫌な感じはしない…
「ねぇ。楓…」
「…ん?」
「あたし楓と付き合ってもいいよ…」
「…うん。…!?えっ!?優紀、今、なんて!!」
「…楓、あたしと付き合ってください。でも、学校では今まで通り、男のあたしと。女の楓ね。他の女の子たちに本当の楓知られたくないし…」
自分でも大胆なことを言ってるのはわかっていた。でも、今は素直な気持ちが言いたかった…
「本当に!?俺でいいの?俺まぢで嬉しいんだけど…」
「うん。」
こうして、あたしたちは付き合うことになった。
その後、携帯の番号を交換した。
「ねぇ。楓、なんでここにしたの?まわりに人がいないとこなら他にもあったんじゃ」
「あぁ、実は…恥ずかしいんだけど俺、クローバーが好きなんだよね///日向に聞いて、ここにしようって思って」
意外な共通点だった。あたしたちはクローバーに引き寄せられてたのかな?
「実はあたしもだよ。ビックリだね!」
「うそ!?まぢかよっ!すっげぇー偶然。運命だよ!」
こんな恥ずかしいことを言えるくらい楓は本当に嬉しそうにしていた。
そして、あたしたちは帰る時間までいっぱい話をした。
あたしが男装している理由。楓が女装してる理由をお互いに話し合った。
まっ、楓の理由にはあきれたけどね(笑)
楓は、あたしの話を真剣に聞いてくれた。あたしの辛さをわかってくれた。おかげで、少し強くなれた気がした。
帰りの電車の中で、楓がいきなり言ってきた。
「にしても意外だったなー」
「なにが?」
「だって、学校で副会長の時の優紀は、無口だし。女子はともかく、男子ともつるまないじゃん」
「こんなに話すやつだとは思わなかった。まっ、俺はこっちの優紀が好きだけどね!」
また…///好きと言う言葉に慣れていないあたしはすぐに恥ずかしくなる。
それに「好き」って素直に言える楓が羨ましいな…
「だって、もしもばれたとき誰も傷つけないじゃん」
「実は、優しいのな優紀って…」
「失礼な。あたしはいつも優しいよ。」
「あはは。やっぱ優紀いいわ。」
そんな話をしてる時、ふと思い出したことがあった…
「あーっ!」
「な、何!?うるさいよ優紀」
「ごめん。じゃなくて、楓、始業式の日の放課後のアレ…あたしのファーストキスだったんだからね。こういう結果になったからいいけど…///」
「うそっ!ごめんな。あれは本当にすると思わなくて…」
楓は本当に申し訳なさそうにしていた。
チュッ!
「…ッ///え、優紀?」
「もういいの、これがあたしのファーストキスってことにするから」
恥ずかしかったけど、これでチャラにしてあげるよ。
こんな話をあたしたちはずっとしていた…
駅に着いて、家の前まで送ってもらった
「早かったな…。」
楓の言葉通り今日はいろいろあったし、好きな人と一緒に入れたから時間はあっという間に過ぎた。
「そうだね。また、明日から副会長と上木さんだね」
「そうだな。まだ、信じられないよ。優紀と付き合えるなんて…」
「あたしもだよ。でも、学校では話せなくてももうメールできるしね」
帰るのは辛かったけど。昨日までのあたしじゃないからなんでも出来る気がした。
「じゃぁ、また明日ね…」
「あぁ。帰ったらメールする。また明日…」
寂しいのをこらえて家に入った…
こうして、あたしの長い一日が終わった…
~楓サイド~
帰り道、今日の出来事を思い出した。
「なんか、いろいろあったなぁー…」
まさか、付き合うことになるまで思わなかったし…それに今日はいろんな優紀を見れた…
思い出すだけで、顔がにやける。
早く帰って優紀にメールしよ!俺は、走って家まで帰った。
優紀と楓の『出会い~付き合う』までのお話でした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
これから2人については「クローバー・2」で現在連載中です。
よかったらご覧ください。