-楓-
時は少しさかのぼり。春休み。
俺は上木楓。性別は男。
前の学校がつまんなくて高校2年から近所の姉ちゃんが先生してる葉山学園に無理やり転入させてもらった。
しかも、『女』として。だってその方がおもしろそうじゃん!
今日は転入手続きで学校を訪れた、広い校内で職員室を探していて迷った俺はとりあえずうろうろしながら職員室を探していた。
その時、生徒会室に先生らしき人が入って行ったのを見た俺は職員室の場所を聞こうとした。
生徒会室の中には先生と少し華奢な男子生徒がいた。
話が終わってから声をかけようと思って入口近くで待つことにした。
すると中から気になる言葉が聞こえてきた…
「なんの用だよ。」
「冷たいなぁ…。せっかく妹の優紀の頑張りを見に来たっていうのにー…。」
んっ?
今、妹って言葉聞こえなかったか?
俺の頭に疑問が湧いた。
さっき見たとき生徒会室には先生と男子生徒しかいなかった…
この疑問を知りたくなった俺は中の2人の会話を盗み聞きしてしまった。
……
やっぱり、この男子生徒は『女』で、しかも、面白いことに転入生の俺の面倒を見てくれるらしい。
「ふ~ん。面白いこと聞いちゃった。これから楽しくなりそう。」
先生が出てくる前にその場から少し離れた。
そして生徒会室から出てきた先生にいかにも今来たかのように声をかけた。
「先生ですか?」
「そうだが、キミは?」
「あたし、今度転入することになった上木楓です。転入手続きで来たんですけど迷っちゃって職員室まで案内してもらえますか?」
「あぁ!話は聞いてるよ。こっちだ」
俺は職員室まで案内してもらった。始業式が楽しみだ。
-始業式。
あいさつもそこそこに俺は春休みのあの話の張本人の横にいる。
なんかいかにも副会長って感じの真面目。今日は眼鏡もかけてるし余計そう見える。
放課後、校内案内を頼んだからいじめてやろうと思う。楽しみだ。
休み時間はクラスのやつらが俺のまわりに集まってくる。
昔から、顔もいいし人気だったけど女としてもいけるんだな。とか思っていた。
ふと、副会長の方に目をやると、なんか難しそうな本を読んでいる。
友達少なそうな雰囲気だな。とか思いながら放課後まで過ごした。
-放課後。副会長が俺のところに来た。
「今から生徒会室行ってくるから少し待ってて。10分くらいで戻る。」
そう言い残して行った副会長の横には、副会長の性格とは正反対な男がいた。
話に聞くとこの学校の生徒会長らしい。
俺は2人を見ていたその時、生徒会長と話していた副会長の笑顔を見た。
「…///」
なんだ、あの反則的な笑顔!?
男だって思ってたら気付かないけど、実はめちゃくちゃかわいいじゃん///
俺は副会長が戻ってくるまでその顔が忘れられなかった。
……
「お待たせ。遅くならないうちに帰らせたいしもう行こ!」
「うん」
さっきの笑顔をまた思い出してしまい。俺は話が出来なかった。
副会長も今は真面目な感じに戻ってるし…てか、そもそもこの子はなんで男装してるのか?
俺の頭の中は副会長のことでいっぱいになっていた。
そして俺の口は思ってたことを口にしてしまった…
「副会長なんで男のふりしてんの?」
副会長はかなり驚いてる。
しかも、ばらされないようにすっごい必死だし。
俺は副会長の反応が楽しくて自分が男であることもばらしてしまった。
しかも、「付き合って!」まで。これには自分でもあとから驚いたんだけどさ。その時、
「はぁ?あんた何いってるか分かってんの?てか、大体今日会ったばっかのあんたと付き合えるわけないじゃん!!大体あんたもなんで男なのに女の格好してんのよ!」
俺は驚いた。
こんな真面目な副会長演じてるからもっと静かな子かと思ってたら結構言うじゃん!
でも、俺としてはこっちの方がよかった。いかにも女ってのはめんどくさいし…。思わず笑みがこぼれてしまった。
あっ!いいこと思いついた。
キスしなきゃ付き合うってことにすれば嫌でも付き合ってくれるだろうって。
我ながらいいアイディア!
「じゃ、あんたが俺にキスしてくれたらあきらめるし、ばらさない」
「…っ!!」
付き合うって言葉が出てくると思った瞬間。
俺の唇に何かがあたった。やわらかい?
俺は理解するのに少し時間がかかった。まさか…キス!!
予想外の展開に俺は困惑した…しかも去ってったその子の目には涙?が見えた気がした。
あきらめるって言ったのに俺はあきらめられない気がした。
「副会長…いや、優紀。おもしろいやっぱ俺の女にしたい。」