7.温故知新かもしれない
帰りも同じように自動追尾式の電灯を使いながら家に帰ってくると、リツが期待するようにこちらを見た。
「お米、炊くの?炊いてくれるの?」
「え、今から?」
「美味しいんでしょ、、、食べたいなぁ」
甘えるように上目使いで俺を見つめるリツに、絆されてしまう。こういうとき、いつの時代も男は弱い。
「わかったよ、炊くから手伝ってくれる?」
「もちろん!」
リツの手伝いのもと、買ってきた大量の食材たちを冷蔵庫に入れていく。レトルトパウチの完全食は、一旦見ないフリだ。
肉や魚はチルドに、野菜は野菜室に、その他は冷蔵庫とパントリーに保存法方に合わせてしまいこむ。
保存性を高めるなら、葉物は湿度を保つように、根菜は日光を避けつつ常温で、肉や魚はドリップを捨てて空気に触れないよう包み直してからしまうのが正解なのだが、今は面倒なのであとでやることにする。
さて、米を炊こう。
俺が最初住んでた頃の日本の家庭には、必ず1台はあった炊飯器という便利な道具が、食の変化に合わせて淘汰されつつあると言うのは由々しき事態だ。
米を研ぎさえすれば、ボタンひとつで火加減の調節もなしに自動で米が炊ける。それを待つ時間で副菜を作ったっていいし、主菜を作っててもいい。コンロが塞がれないから、なんならどっちも作ったっていいのである。
今の時代の炊飯器は、慣れ親しんだいわゆる炊飯器、家電量販店で個別で売ってるようなものではなく、ビルトインで米研ぎから炊き上がりまで全自動でやってくれるようなものに進化しているらしい。米さえ補充しておけば、壁もしくはキッチンの備え付けのスペースのなかで水道から水をとって炊いてくれるらしいのだ。
正直、欲を言えばそれを使いたいところなのだが、この家に一応あるにはあるらしいが住み始めてから一度も使ったことがないのでしっかり掃除した方がいいのと、使い方を俺が学ぶ所から始まるので今回は鍋で炊くことにしよう。
一人暮らしを始めたてのころ、ネットで注文した安い炊飯器が届くのを待っている間に、1回だけ鍋で炊いたことがある。
始めちょろちょろなかぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火を引いて、赤子泣いても蓋とるな、の歌に沿って炊いたはずが、浸水を忘れて炊き始めてしまったため、最初の一口は芯が残る食べ応えだったのはいい思い出だ。追加で水を少し足して数分加熱したらしっかり炊けた状態になったので、卵とふりかけで食べた記憶がある。
とまぁそんなことを思い返しているうちに、米が研ぎ終わり鍋に米をいれて給水だ。これまでに何百回と繰り返した作業なのでほぼ無意識で手が動く。
精米したての米なので気持ち水は少なめ、人差し指の第一間接より少し下らへんだろう。別に計量カップがないわけではない(リツは見た目からはいるタイプらしく一通り調理用具は揃っている)ので、計量したっていいのだが、結局のところ濡れた手でそのまま計ればいいのだから指が一番楽なのだ。
さてここから30分から1時間くらい浸水だ。俺は過去の失敗を無駄にしない性分なのである。




