2.三度目の正直
どれほど経ったのだろうか、ゆっくりと意識が浮かび上がるのを感じ、ふと気づくと俺は見慣れない机に突っ伏していた。目を開けるとくたびれたグレーのスウェットに垂れたよだれの跡が見える。
痛む背中をきしませながら起き上がると知らない部屋にいることが分かった。
寝起きのままのベッドに脱いだままのパジャマ、開けっ放しの引き出し。だらしがない。
生活感のある部屋に、起動し続けている目の前のパソコン。どうやらこの体の持ち主は別の世界へ転生してしまったらしい。
パソコンの画面ではなんかのゲームのオープニングが流れているから、大方助けてくださいのポップアップにそれとは知らずYesをクリックしてしまったんだろう。
…読んだことあるぞ、そんな小説、前世の転生前に。つまり前々世か?
そこではたと気づく。つまり俺はまたしても転生してしまったと言うことではないか?
しかも今回に至っては成人の身体に入ってしまったようだ。前回異世界では大人の記憶を持ったまま赤子からやっていたため手先の作業や周囲への反応などもどかしいところがいくつもあったが、今回は全く意識しなくていいと言うことではないだろうか。
そもそもこの身体は誰なのだろう。手などを見るに意外と若いがとても細い。色が白く骨張っていて、繊細そうでもあり不健康そうでもある。。
思い付いて以前の世界で使っていた魔法を使ってみた。簡単なもので、指先に光を灯す魔法。
…着いた。いいのか?あり得るのか。
異世界の魔法はどうやらこっちでも通用するみたいだ。つまりあっちの魔法の力は魂に付随するものなのだろう。
と、言うことは、だ。むこうで魔獣を狩っていたときみたいな高火力の複合魔法も、出したいと思って出せなかった仕組みの難しいモノたちも、理解すれば出せると言うことではないか!
だが、その必要もないな。だって目の前に現物がある。見たところパソコンは俺が最初に生きていたころよりも薄型に進化している様だし、この様子であれば他も、より進化して存在している気がする。
魔力だって無尽蔵じゃないんだ。世界によっては空気中の魔素を取り込んでとか聖水で回復とかいろいろあるみたいだが、俺のいた世界では体力みたいなエネルギーで、魔法を使えば使っただけ腹が空くし疲れるタイプだったのだ。燃費が悪いんだ、これが。
さっき使ったあの簡単な魔法でさえ、この身体には結構負担だったみたいで、どっと疲れが襲ってきた。
と同時に腹の虫が盛大に鳴いた。
「そういえば腹が空いていた」
とつぶやいた声は、ひどく掠れているが紛れもなく肉声で、俺が生き返ったことを実感させてくれた。




