――に変身した姿
見た事の無い能力、普通はあり得ない能力。あれは掠っただけでも危ない。私の直観がそう伝えた。怖くなり胸の鼓動が早まり、全身が芯から震える感覚を初めて味わった。
「皆勤賞逃しちまったな~。朝から戦闘だなんてダメダメやな」
あの波動弾と同じ色をしたパステルカラーに黄色いコントラストが疎らに入った服に身を包む魔法少女が現れる。洗濯物の間に隠れ、その場をやり過ごそうと身を屈める。
私の目には見えていないが確かに彼女は誰かと話している。彼女にもウィルネの様な存在が憑いているのだろう。ならば私が死んでいないという事は既にバレていると考えた方が良い。ウィルネさんも攻撃を受ける直前に教えてくれた。ウィルネさん達は魔法少女の位置を把握できる。
「どうして行かないんだい? 早くあいつを倒して力を集めようじゃないか」
「い、いや、一時間目に遅れたくないです! 今回は撤退しましょう!!」
先程まで戦闘に心を踊らせていたのが手に取るように分かったウィルネさんの表情は一瞬のうちに退屈そうな表情に変わった。口角は分かりやすく垂れさがり、瞳の色もどこか暗くなっているように見えた。
「でもたぶん位置バレてますよね? ここで変身を解いたら……」
「いや、大丈夫だよ。ボクが感じ取ることが出来るのはあくまでも魔法少女に力を貸している時だけさ。それに位置がバレているのはキミじゃなくてボクだからね」
気の抜けた声で真っすぐ浮く事すらやめて、だらりと横になりながら説明された。彼女の視界に入らないように向かい側の植木鉢と位置を変え、呪文を唱えて変身を解き、学校の正門へと急ぐ。
「少し待っていてください。やる事があります。それと後で協力してくれませんか?」
結局、二時間目の授業が始まってしばらくした頃に校内に入り、『魔法少女の戦闘に巻き込まれ逃げていた』苦しい言い訳をすると不審な目で見られながらも何とか反省文を書かずに済んだ。その後は普通の女子高生の様に暇な授業をウトウトとしながらノートを取り、友達と一緒に昼食をとる。
「今日は中庭で食べない?」
「賛成~」
魔法少女になる前のありふれた日常。友達と楽しく語り合い、五時間目の授業で睡魔に完敗し、気の進まない体育の時間では言い訳を見つけて手を抜く。いつもと変わらない日常、そして違うのはここから――
「知らない人に付いて行くのはもううんざりだね。でも彼女ではなかったよ」
「ありがとうございます。ウィルネさん」
全ての授業が終わった放課後、登校中に戦闘が起こった中心地には黒い衣装をまとい魔法少女に変身した姿が一人ポツンと立ち尽くす。その視線は学校へと向けられ下校する生徒を眺めている。
何かを感じ取ったのか、疲れ気味で飛んでいたウィルネの背筋がピンと張りつめた。
「――来たよ」




