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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第十話 『魔法少女と願い事』
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魔法少女

「もう、いい……!!」


 剣が青い空を完全に覆う。一つの避ける隙間さえない。一層ではい。何層も、何層も重ねられて完全に私達


 を殺す気だ。とにかく逃げようとした瞬間、頭から重りが圧し掛かる。立っているのも辛い。肺が悲鳴を上げ、腰と膝が耐えられずに倒れ込む。


 空が輝いた。太陽の光を剣が反射したのだ。刃先は私の目を目掛けて落ちて来る。私の能力ではどうしようもない。それをただ受け入れるしかない。


「させるか~~! ディレイ!!」


 重力に乗せられ突き刺さろうとしていた剣が一斉に止まる。まるで、私たちの上空だけ、時間が止まったかのように。しかし、反射の角度が変わっている。今もなおゆっくりと落ちている。個体ではなく、空間を止めているひよりの負担は大きい。いずれ耐えれなくなる。鉄の処女では貫通特化を付与された剣を防げない。模倣の魔法少女は終わらせに来た。


 私は地面を握りしめ、重い身体を起き上がらせる。ひよりの荒い息が響き始め、数個が地面に突き刺さり始める。


 彼女との距離は遠い。剣が降り続ける他の場所を拷問は通れない。私が行かなければならない。だが、『インヴァート』は使えない。視界に剣が映り込むからだ。


「モルティフォルス!」


 ここから彼女までの範囲は二十メートル以上。尚且つ、剣が際限なしに降り注ぐ。五センチ以上の物は無数にある。その全ての位置が頭に入り込む。頭が割れてしまうのではないかと思う程の激痛。いくら魔法少女といっても耐久には限度がある。それを優に超える情報は脳の神経が焼き切っていく。


 その痛みに頭を抑え、地面に倒れ込む。それでも痛みが止むことは無い。そしてこれを解除する気も無い。


 頭が燃えるように熱い。全ての血が頭に流れ込み、血管が千切れそうだ。脳が酸素を欲するが、大気変動で酸素は薄い。呼吸も今までにない程、荒く、激しく、止めどなく膨らんでは萎む。そんな条件下で、私は彼女の足元にあるだろう石ころを感じ取らなくてはならない。意識が飛びそうになるが、舌を噛んでとどめる。叫んで、歯を食いしばって、身悶えながらその一つを見つけた。


 顔を上げ、ステッキを固く握り占め、立ち上がる。入れ替えても終わりではない。そこから殺さなくてはならない。見つけたソレと入れ替わると同時に目の前で驚く模倣の魔法少女の姿が映り、視線が合う。お互いに間合いの中。剣を構えようとする彼女に対して私はステッキを放り投げた。


「ソウルヴェルト!!」


 視点が入れ替わった。だが、今までとは明らかに違う。入れ替えたはずの私はそこにいる。確かに視点は変わっている。そう、模倣の魔法少女の視点。


 その時、私は未来が見えた。私が倒れる未来が、私が死んでいく未来が見えた。けれど、この視点は異様に低い。まるで倒れているようだ。


 それが分かると私は笑った。今、目の前にいる私は全く笑っていないが、私は心から笑えた。私は投げられたステッキを掴み取り、クリスタルに向けた。私は苦しんでいる。能力を解除していないから今も降り続ける剣の情報量に頭を痛ませている。酷い顔だ。


 その青く輝くクリスタルに刃先を当て、私の視点は入れ替わる。この能力の唯一の欠点だ。あのまま殺すと自殺になってしまうらしい。さっきまで笑っていた模倣の魔法少女の身体は苦い表情へと変化し、苦しみの表情を浮かべていた私の身体には笑顔が浮かぶ。


 拳を強く、固く握りしめ、その刃先の触れているステッキの柄を目掛けて拳を振った。罅の入る感触が伝わり、割れる音が響く。


「私の幸せを……ッ!」


 彼女の背後から無数の剣が飛び出した。それは彼女の身体も厭わずに私を狙う。最期の一撃、だが、そんな数本は簡単に避け――


 入れ替えの能力の欠点。その一つは入れ替える物がなければならない。これは固定されている物は不可能。そして、自分自身が固定されている時も不可能。彼女はしっかりと私の脚を氷漬けにしていた。


 願いの叶わぬ自分自身の身体を貫き、剣が私の胸に突き刺さる。それはしっかりと私のクリスタルも巻き込み、クリスタルに罅が入る小さな衝撃が胸に響く。


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