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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第十話 『魔法少女と願い事』
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魔法少女の特性

 一滴の血も浴びずに真っ黒い身体をしたウィルネさんかいつもよりも高めの位置で飛びながら話す。そう、私は今一人の魔法少女を殺した。残念ながら今戦っている模倣の魔法少女ではないが、それ相応の力を獲得した。そして、同時に弱体化もさせた。


 魔法少女において最も大切なのはパートナーに言葉を伝える事。私の場合はウィルネさんだ。変身も解除も言葉をパートナーに伝えなければ出来ない。だから口を防がれてはいけない。


 そして、名前で魔法少女を殺す時もその姿が見えている状況でパートナーに言えば殺すことが出来る。血のヴェールで見え隠れしながらも私はハッキリとその姿を捉えた。あの右手に握られた彼女のクリスタルを捉えていた。


 黒宮 楓のクリスタルは砕け散った。


 彼女は技の威力を試そうといていた。その能力が砕け散れば反応は遅れる。この技あわよくば瀕死になってくれれば良かったが、


「驚きですね。敵の耐久値が全く分かりません」


 潰された範囲は完全に更地となり、岩の一つも無い綺麗な場所となっている。だが、見た目はどうも悪い。鉄の処女の側から消え始め、中の様子がよく見える。大量の変色した、または棘に穴を開けられ人体とはいいがたい肉塊が零れ、中心に一つの山を形成する。目を瞑りたいほどの光景。だが、その頂上に真っ白な服を纏い、王座に堂々と座る彼女から目を背ける事は出来ない。


 相手の能力には常時再生能力がある事は確認した。クリスタルに触れ、能力の名前を言うと模倣が出来るという事だろう、自分が今、何の能力を使ったか分かってしまうという能力の制限はありがたい。身体のクリスタルを見れば数が、言葉を聞けば発動数が露見する。彼女の域に達するとあまり意味をなさない制限だが。


「名前を知っていたの? ……引っかかった」


 王冠が少し小さくなっている。いくつかは割ることが出来たのだろう。だが、身体に埋め込まずに保管するバナナトラップのようなどうでもいい能力だけだろう。大した差ではない。


 万策は尽きた。あとは地道に剣を交えるしか手段は残っていない。近接戦闘においても秘策はある。一撃で消し飛ばない限りは大丈夫だが、そういう時に限って一撃でやられるのがお約束だ。


 だが、手段はこれだけ。私はバナナの皮とぬるぬるローションの無くなった平地を駆け抜ける。無数の剣がゆっくりと降り注ぐが、私には一本もかすらない。開けた大地に溜まる血を踏み鳴らし、ステッキを構える。


 死体の山も消え、平坦でとても戦いやすい地形となった。拷問も私に追いつき、挟撃を開始する。光の魔法少女でお互いにどのような援助が出来るかは頭に入っている。彼女と、そして彼女が召喚した拷問器具と位置を入れ替え、常に動き続ける。


 接近戦では武器を雨の様に落とす事は出来ない。模倣の魔法少女も一本の剣を取り出し、私の攻撃を捌く。


 大気変動による影響かこれだけ動いているのにも関わらず身体が寒い。手かかじかみステッキを握る手が緩む。それに焦り、呼吸が乱れる。空気が薄く、どれだけ肺に空気を送っても足りない。空気が濁っているようで、めまいがする。


 一瞬、足元がグラついた。たったその一瞬で私の左腕は血だまりの地面に迎えられる。気づかなかった。能力で切れ味の上がった剣は私に困惑を与えた。左手の感覚がなくなった。今落ちたのは人の手だ。普通に考えて私しかいない。だが、痛みは――


「ッツあぁぁアァぁぁあア!!」


 脳ではない。私の脳が理解しきる前に私は反射的に悲鳴を上げた。そして遅れて感じる痛みにさらに叫ぶ。痛み、熱、血の流れる感覚、失っていく感覚、理解した瞬間に全てが流れ込んだ。今まで戦闘で欠損は無かった。今まで痛みとは違う。


 直ぐに鉄の処女が私を攫い、暗闇に閉じ込められる。傷口を抑え込みながら針の無い鉄の処女の中で座り込み、荒い呼吸の中、変身を解く呪文を唱える。腕の痛みも無くなり、左手の感覚が戻る。だが、それでも血の気は戻らない。魔法少女の超人的な身体とは言え、私の腕が目の前で堕ちたのだ。少しでも気分を落ち着かせようとするが、身体の節々が痛く、呼吸が上手く出来ない。


 魔法少女の間に受けた傷や異常状態は変身を解除すれば治る。つまり今受けているこれは新たに人間として魔法少女の攻撃を受けているという事、


「反転の星に願いを……トランスフィグラーレ」


 魔法少女になると身体の痛みや呼吸の感覚が楽になる。やはり多少の重力操作と毒素をばら撒いているのだろう。失った左腕もしっかりとある。この作戦なら首を落とされない限り負けない。


「魔法少女の特性を最大限使っているが、褒めた戦い方じゃないね。肉体の修復は大変だから『痛み』が増えるよ」


 真っ暗な鉄の処女の中で黄色い目と口だけがぼんやりと浮かび上がり、それは私の傷一つない身体を眺めている。呆れきったのか大きなため息を吐いてその場から消える。


 そう、私はもう止まらない。ウィルネさんも理解してくれている。だが、ウィルネさんは優しいからこのやり方を非難し、優しいから何も言わずに消えていった。


 私も一息を付き、両頬を二回叩く。自分に喝を入れて勢いよく鉄の扉を突き破った。その瞬間目の前に剣が振り下ろされギリギリで避ける。唖然とする私に拷問がキレ気味に謝る。再登場に少し時間をかけすぎたか、彼女の至る所に切り傷が付いている。


「ありがと。まだ戦える?」


「余裕とは行きませんが、なんとか」


 背中を合わせるように協力し合う私たちを見かねてか、後ろから足音を立てながらずけずけと私と拷問の間にひよりが割って入る。私にムスッとした表情を向け、拷問には威嚇の鋭い視線を送る。


「ひよりもいるんだからね! 私が遅延させて隙作ってるの忘れないでよね!」


 そう宣言し、また拷問を一瞥する。全く意に介していない拷問は無関心な顔で冷たく返す。後ろから刺したりしなければ良いのだが、この仲の悪さは少し不安だ。街も違うため、因縁があるというわけではなさそうだが、何が彼女たちを仲違いさせているのか、


「ほら、戦うよ! 殺し合うなら後にして」


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