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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第十話 『魔法少女と願い事』
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魔法少女の身体

 そう言って彼女はすごい速さで突撃していった。前に見た時よりも格段に早い。一歩一歩が地面を穿ち、その踏み痕が地面に残る。全く動かない模倣の魔法少女に向けて大きく彼女は拳を振りかぶり、勢いを全て乗せた拳を突き出す。


 激しい轟音と共に衝撃波が伝わる。これを二人の合図にする。きっと数分後に集合するだろう。だが、そんな事より目の前の光景をどうするか考えなければならない。


 彼女の放った拳は模倣の魔法少女に届く前に巨大な鉄の盾によって防がれた。大きく凹み、その盾はもう二度と使えないだろうが、彼女の能力なら何度でも出せるだろう。


「つえーな。ところでその宙に浮いた王冠はクリスタルか?」


「…………」


 さっきまでは見当たらなかった王冠が彼女の頭上で回っている。日光を反射し、光り輝くその王冠は強さの象徴である。あの輝きはまさしく私達魔法少女の胸の真ん中で光り輝くクリスタルと同じもの。クリスタルだけになっても死なない魔法少女の特性を生かして彼女は大量の能力を模倣するのだろう。強い能力だが、ここまで開花させるのは大変な事だ。


「私を殺したりしないでね!」


「あぁ、今の敵はアイツだ。お前はその後に殺してやるよ」


 私も前線まで足を運び、灰色の魔法少女と並ぶ。そして、呼吸を落ち着かせて一歩踏み出す。屋根の上に跳び、迂回しながら隙を伺う。灰色の魔法少女はまたも直線に走り出し、最短距離で殺しにかかる。彼女が殴りかかる瞬間に合わせ、模倣の魔法少女の後ろに落ちた瓦礫と入れ替わる。


 完全に前後を取った。そして私の一撃は灰色の魔法少女よりも速く彼女に当たる。だが、突き出したテッキは固い鉄に弾かれる。前も同じ様に防がれ、指一本も届かない。


「…………」


 スッと模倣の魔法少女の身体が浮き上がり、宙に浮かぶ。無重力になった訳ではない。彼女は完全にそれを操り、浮遊している。上から見下すような視線を私たちに向け、腕を上に上げる。決して下着が丸見えで紐パンツがえっちだとか考えてない。それ以上の物を見てしまって正直それどころではない。


 そんな私の絶望も知らずに彼女は一本の剣を空中に出現させ、それと同じ剣を増やしていく。空一面が鋭い刃で覆われ、彼女が腕を降ろすと同時に力を失ったように無数の剣が落下してくる。段々と速さを増していく中、後方の一本の剣と位置を入れ替え、避けると同時に彼女へ近づく。だが、やはり盾で攻撃を防がれる。私の攻撃は威力が高いわけでもない。突破するのは難しいだろう。どうにかして灰色の魔法少女にこれを突破してもらわなければならない。


 だが、分かった事もある。彼女の能力はハズレが多い。そう、武器等だ。もし、彼女が環境系の能力や概念系を沢山模倣していたら間違いなく詰んでいただろう。確かに強い。だが、勝てるのではないかという希望を見出してしまった。


「あぁ! 邪魔くせーなちまちまと! 降りてこいや!」


 落ちてくる剣から必死に逃げ惑う灰色の魔法少女が目に入り込む。彼女なら楽に剣ごと壊せるだろう。だが、何かがおかしい。辺りを見回してようやくその違和感に気付いた。剣が柄までしっかりと刺さっている。ただの剣ではない。切れ味が異常だ。落ちていく剣はまるで豆腐でも切るかのように地面に刺さっていく。


「灰色! 私を殺して!」


「任せろ! 墜閃――」


 そう言いながら彼女の下まで落ちていく。ステッキを模倣の魔法少女に向け、飛び掛かる拳を見定め、当たる直前に叫んだ。


 視界が空中へ変わると同時に下から鉄を穿つ音が聞こえる。当たり前だ彼女も力を溜めながら逃げ回っていたのだ。鉄ぐらい簡単に貫通できるだろう。そして鉄の破片と共に吹っ飛んで行く姿が見える。住宅に激突し砂埃を立ててその中に消える。


「ッチ、クリスタルは防がれたか……」


 やがて先程と同じように立ち上がる影が見える。未だ闘志も何も見えない冷たく、静かな目。少しぐらいは怯んでくれても良かった。


 余裕の表情のまま彼女はスッと腕を上げる。さっきとまんま同じ攻撃。空中に鋭い剣先が現れ始める。だが、今回は剣だけではなく、槍や弓、斧のような物まで混じっている。


「ディレイ!!」


 その言葉と同時に振り下ろそうとした彼女の腕が遅くなる。これには驚いたようで自分の腕を見つめる。その隙を見逃すはずもなく、二人で畳み掛ける。腕が遅くなり、その場から逃げ出す事は出来ない。だが、彼女の攻撃は言葉を言わずして現れる。何枚もの鉄の盾が立ち塞がるが、私はキューブを上から投げつけ、灰色の手を掴む。


「行って来な……!」


 一瞬で彼女の上空へと距離を詰め、灰色を投げ込む。すぐに展開する盾を左手で壊し、右腕を振りかぶる。


「――重力操作」


 やっと開いた口から放たれた言葉は私の勝てるのではないかという希望を十分に影らす。地面に叩きつけられ、灰色の魔法少女の攻撃は地面に大きな罅を作って終る。そして、重力に押しつぶされる彼女に向けて剣を向ける。あの剣は人体などトマトより簡単に切断できる。


「ファラリス! 燃やせ!」


 その言葉に模倣の魔法少女は牛の中に閉じ込められ、下から真っ赤な炎がそれを焚き付ける。だが、その牛の頭部をゆっくりと切られ、澄ました顔の彼女が顔を出す。


「……首を落とせ」


 丁度出た首に枷が掛けられ、その真上から鋭く磨がれた斜めの刃が落とされる。だが、それは彼女の首を切り落とす前に砕ける。バラバラにそして散り散りに灰になるように壊れていく。


 全言撤回だ。彼女は強い。強すぎる。今の能力に名前を付けるならば『崩壊』だ。正直これだけでも強い。だが、今分かった種類だけでも『重力』、『剣』、『槍』、『斧』、そして、膝の火傷が消えている事から『回復』も持ち合わせているだろう。


「流石にお強いですね」


「ひよりこんなのと戦うの〜長いと困るんだけどな〜」


「誰だテメーら。あぁ、アイツの協力者って奴か」


 だが、そんな敵を前にしても一歩も引き下がる様子はない。みんなやる気に満ちている。各々に武器を構え、埃を払いながら立ち上がる模倣の魔法少女に刃を向ける。


「じゃあ、さっさと倒しちゃいますか!」


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